シナリオ⑪
第二章 大学
前回までのあらすじ
高3の夏、友人のユウマと地元の図書館を訪れていた。ある日、図書館内で同じ高校に通うのんに、一目惚れしてしまった。そして夏休み最終日、2人は付き合うことになる。その4か月後、理由も分からずのんから別れを告げられる。そして3年後、あるLINEを受信する。それはのんからの、3年ぶりの連絡だった。このLINEがきっかけとなり、2人は再開することに、、、、。
笑顔の治癒力
黒髪ショートが世界で1番似合う女性。学生にも関わらず、女の子よりも女性という言葉の方がしっくり来る佇まい。
そんな女性が、隣で照れ隠しをするように言葉を発した。
この状況に、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
「もう一回やり直そう俺たち。次は絶対上手くいくと思うんよ。」
根拠なんてなかった。しかし頭に浮かぶ単語たちをつなぎ合わせた結果、僕はこの表現で自分の気持ちを伝えていた。
「あんちゃんっていつも場所だけはちゃんと選ぶよね。」
のんの返答に僕の世界はひっくり返る。告白の返事は、はい・いいえ・待っての3種類ではないのか。まさかの答えである。もう頭に浮かぶ言葉など何もない。
女性からの言葉によるアッパーを食らい、一発KO寸前の男子大学生。
一方で黒髪ショートが似合う目の前の女性は、幸せそうに笑っていた。
女の笑顔は男のHPを回復させる。その行為が本心かどうか、それは抜きにして大抵の男には良薬である。
笑顔の恩恵を受けることで、僕はなんとか立ち上がることができた。
のんは続ける。
「前は理由なく、あんなこと言ってごめんね。私もやり直したい。」
視界に映る夜景。無数の光たちが、照らし合って1つの異世界を創り出す。
酔いが覚めた状態で見る、その夜景は最高だった。男女の気持ちを近づけてくれる。まさに夜景とは心を引き寄せあう磁石である。
至って純粋な僕たちは、そのままホテルへ行くことなどありえない。夜景を堪能し終え、当然のように駅へ向かった。
彼女は明日にも鹿児島へ帰ってしまう。寂しさを打ち消すため、その道中では手を繋いで歩いた。
世界から見た2人は、ただの若い男女カップル。一方で出来立てほやほやのカップとは、その当事者しか知り得ない事実。
そんな特別な事実を創り出した。
それまではコンプレックスに感じていた。自分の本心に任せ行動する性格に対して。しかしこの時ばかりは誇らしく思うことができた。
帰りの電車内で、小倉ー鹿児島間の切符賃を調べる。
「行けんことないね。」
安堵の気持ちで言葉が出た。
「来てくれるんだ!」
またもや、汚れ1つない宝石のように輝く笑顔を見せてくれる。
この日をもって、のんとの復縁が叶ったのであった。
続く
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