マガジンのカバー画像

たられば

11
完結済みです。「死とは?」これは「何でも屋」と「高嶺の花」の物語。フィクション小説です。
運営しているクリエイター

#たられば

たられば<7話>

蟻の関係  「なぜなのよ!!」  それは2025年10月。シュンとアヤが婚約を決め、2か月が経過した頃である。  アヤは大きく口をあけ、眉間にシワを寄せる。この日はいつもと違い、2人の巣には彼女の声が響き渡った。  同棲を始めて3年が経つ。一般的に言えば、今まで喧嘩がない方が不思議であった。これは乗り越えるべき壁なのかもしれない。      「ごめん。ごめん。気をつけるから。」  シュンはアヤを恐れつつも、その細くなった目を見て謝罪した。  「2回もいらない

たられば<6話>

前兆。砂嵐と張り紙 2025年、8月の夜。  「話があるんだけど。」  シュンは自分の手を後ろに回し、アヤの背後から声をかけた。  この時2人が同棲して3年が経過していた。  「なにー?」  家事を終えたアヤはソファーに座り、ニュース番組を見ながら口だけで返答する。  1日の終わりはニュースで締める。かつてバリバリのキャリアウーマンであった彼女には、このように捨てきれない習慣がいくつかあった。  その番組では、家の近所で起きた通り魔事件の特番をやっていた。まだ感

たられば<5話>

あたりまえ神話  2023年、某月。  「おはよ!シュンの好きなカレー作ってみた!!」  重い目を開けると、キッチンにはアヤが立っていた。驚きのあまり、シュンの目は一気に覚めあがった。その日は2人が同棲して、1年が経過していた。    感染症の影響により、2022年にアヤの会社は倒産。自宅待機中、何度も正気を取り戻しては病んでいくアヤの心は、倒産と同時に一気に落ち込んだ。  一方シュンの会社は、事業をITに変換しなんとか生き延びることができていた。そこでシュンはア