プロスポーツにとっても厳しい経営状況のなか
東京V来月資金ショートも
一連のウイルス騒動により、観客の入場者制限があったことも大きく影響したためか、プロスポーツの経営にも大きな影響が出ています。Jリーグだと、J1ベガルタ仙台、サガン鳥栖あたりがニュースになっていた記憶がありますが、ここにきてJ2東京ヴェルディのニュースが出てきました。
https://www.nikkansports.com/soccer/news/202012150001104.html
------(以下引用)
東京Vは増資のめどが立ったことから、現体制で増資して立て直す構想を持っている。しかし、10年の親会社の日本テレビ撤退によって、ゼビオに対して発行した新株予約権が足かせとなり、現実的には難しいという。Jリーグ幹部は「今の体制を一新して、ゼビオが経営するのがスムーズ」とし、ゼビオが新株予約権を行使して、経営の主体となって東京Vを立て直すしかないのではないかと指摘する。
しかし、経営の苦しい東京Vを傘下に入れると、株価にも影響するため、ゼビオの株主からの猛反発も予想される。経緯を知る関係者は「より現実的な選択はゼビオが新株予約権を行使して東京Vの現経営陣を一掃した上で、タイミングを計り、他の企業へ転売することだろう」と指摘する。年内には東京Vの株主総会が開かれる予定。ゼビオから東京Vに出向中の森本譲二副社長は、取材に対して「今は何にも言えない」と言葉を濁した。
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ゼビオは、日テレが東京Vから撤退した10年に9000万円を支払い、新株予約権51%を取得した。その後、56%になったが最近そのうち11%を行使して1000株を獲得し、45%となった。仮に今後、ある企業が東京Vを100億円で買い取ったとしても、翌日にゼビオが45%の新株予約権を行使すれば、45億円分はゼビオのものになる。
(以上引用)------
2018年にはゲーム開発の「アカツキが東京ヴェルディの主要株主に」という記事もあったので、筆頭株主がゼビオ、その次あたりの株主がアカツキということになるのでしょうか。
株主2社の比較
さて、この2社の財務状況を比較してみます。それぞれの直近有価証券報告書における企業概況はこちらです。
ゼビオ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3932/yuho_pdf/S100J1JG/00.pdf
アカツキ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8281/yuho_pdf/S100J1NF/00.pdf
ゼビオは、2016年~2020年まで売上高は2,200~2,300億円を推移していて、売上高経常利益率は3%前後、純利益率は1%前後を維持しています。他方、アカツキは2016年決算の約60億の売上高から2020年決算で約320億と約5倍、売上高経常利益率33%以上、純利益率も18%以上を保ったまま推移している、いわば成長中(急成長!?)の企業であるといえます。財務体質は両者ともに自己資本比率が高く健全といえる状態でありますが、資産額でいえばゼビオの方がアカツキの倍以上大きい企業です。
ゼビオが保有している新株予約権のオプション料がどれくらいなのか、あるいは無償割当であるのかはわかりませんが、ゼビオが権利行使した場合はおそらく連結対象会社となり経営状況の悪いヴェルディを加えた連結の利益率は悪化し記事にあるようにゼビオの株価にも悪い影響を与えるでしょうし、財政面における負担もそれなりの大きくなるでしょう。ただゼビオの主たる事業はスポーツ用品の小売であり、プロスポーツクラブと連携することで何らかのメリットがあるからこそヴェルディの株主になっていると考えられます。それならば、支援を続けることによってこれまで同様かそれ以上の相乗効果が見込めるなら、たとえ株主からの反対があっても権利行使をするでしょう。ただし、東京ヴェルディのクラブHP( https://www.verdy.co.jp/partner/corporatepartners/ )を見ると、主要株主としてゼビオが表立つこともなく、クラブと上手に連携していない印象があります。その点、アカツキはユニフォームパートナー(胸スポンサー)になっており、東京ヴェルディの支援にも積極的にのってきそうな雰囲気を感じます。支援の金額によってはアカツキが筆頭株主となったほうが上手くいくかもしれません。
名門ヴェルディ復活に向けて
ヴェルディ(読売クラブ)といえば、世代によっては『名門』の印象が強いクラブですが、今世紀に入りヴェルディは川崎から東京にホームタウンを移しました。今や川崎のサッカークラブといえば『川崎フロンターレ』、東京のサッカークラブといえば『FC東京』という印象が強くなったのではないでしょうか。J2に長く在籍するクラブになってしまったためか、平成世代には影の薄いプロサッカークラブという印象でしょう。しかし、仮にも“首都”東京をホームとするクラブです。人口も多く市場も大きい東京のクラブですら経営難であるなら、地方クラブはもっと苦しいのが状況ではないでしょうか。
来年でJリーグ発足30年になり、J1からJ3まで含め全国各地にプロサッカークラブが誕生しました。地方自治体からの援助なしではやっていけないクラブがあったり、親会社や主要株主の関係者が経営陣となり、放漫な経営をしているといった事例も少なからず見られるようです。プロサッカークラブであるにもかかわらず、ファン、サポーターよりも主要株主や経営陣の顔色ばかりをうかがってクラブの人気を落としたりするクラブを見てると、なんだか悲しくなります。もちろんプロスポーツの運営は一筋縄ではいかないということは承知しているつもりですが、商売の基本を忘れた(知らない)官僚的な経営者が頂点にいると、クラブの経営は一気に傾くのではないでしょうか。
野球よりサッカーの方が人気のある時代になった今だからこそ、経営や運営においても『ホンモノのプロ』人材が求められる時代だと思います。経営に失敗すれば逃げずにその責任をとらなければなりません。選手や監督、スタッフが『プロ』として結果を求められ、シーズン修了後には厳しい年俸査定や契約の可否が待っているというのにそれを査定する経営陣が責任をとらない素人集団ならば、査定される側の気持ちは複雑きわまりないことでしょう。
端から見たているだけですが、もはやJリーグの強豪クラブとなった川崎フロンターレはその点でも、上手な経営をしているなぁという印象があります。
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