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梨状筋症候群 -運動療法を考える-

いつも臨床+をご覧いただき、ありがとうございます。
臨床+3週目を担当する佐藤です。

今月の臨床+テーマは「股関節」

今回は坐骨神経症状が特徴的であり、
腰椎椎間板ヘルニアとの鑑別が必要な
梨状筋症候群についてまとめていきます。

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外来での運動器疾患を担当している方は
経験したことのある疾患ではないでしょうか。

今回は障害の誘因となる姿勢や動作による機能不全から考える運動療法の戦略・選択について考えていきます。

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今回のnoteの流れは
まず股関節の構造体・解剖学をおさらいし、梨状筋症候群の病態を整理していきます。その後、他疾患と鑑別するための評価や問題点を中心に、臨床で行う評価を行い、運動療法を行っていきます。

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■股関節後方の解剖

はじめに、梨状筋症候群を理解する前に、アプローチにもかかせない股関節後方の構造と外旋筋の機能について整理していきます。

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|梨状筋機能

今回のテーマの中心である、
梨状筋の機能についておさらいしていきます。

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梨状筋の走行は、
仙骨前面から起始となり、前外方へ走行し、大坐骨孔を通って大転子の上縁に付着します。 筋の走行から股関節屈曲・軽度内転位でより外旋作用として働きやすいといえます。 

すなわち、梨状筋は股関節中心を通る矢状軸の上方を通過していきます。
そのため、外転運動のサポート(補助筋)をしながら、股関節の安定化(骨頭の求心性を高める)に働いていると考えられています。


|股関節外旋筋群による股関節の安定性

梨状筋と併せ、深層外旋六筋を構成する双子筋や大腿方形筋も走行上、関節に向かう力が大きく働くため、骨頭の求心性・安定性に働きやすい構造となっています。

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外旋筋群の位置関係は上方から
梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋・外閉鎖筋・大腿方形筋の順で位置しています。上方に位置する筋ほど股関節内転位で緊張しやすく、下方ほど外転位で緊張しやすくなります

つまり、梨状筋は外転作用、大腿方形筋は内転作用をもちます。

そのため、筋の走行から各外旋筋エクササイズをする際には、そのアライメントに注意して進めていく必要があります。

(引用|臨床+.石橋哲平著)


■梨状筋症候群の病態理解

本題である梨状筋症候群について進めていきます。

|病態のメカニズム

|梨状筋症候群
梨状筋をはじめとする股関節外旋筋群と坐骨神経の間で生じる絞扼障害であり、 殿部や坐骨神経領域に疼痛および痺れを呈する疾患である。

|タイプ分類
梨状筋の構造上、大きさには個体差があり、長時間の過緊張状態により、梨状筋が坐骨神経を絞扼することで疼痛が生じやすくなります。

また、坐骨神経は走行上、梨状筋と坐骨棘に挟まれるため、梨状筋下は絞扼されやすい部位となります。Beatonらによると 梨状筋と坐骨神経の位置関係は6つのタイプに分けられます。

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TypeA:90%
TypeB:7.1%
TypeC:2.1%
他、その他

上図にあるように多くは解剖学的な異常のない”TypeA”となる状態がほとんどです。そのため、改善していくためには、局所機能だけでなく、患部外による代償的な作用としてストレスを生んでいる可能性も考慮してアプローチしていかなくてはなりません。

|解剖学的要因
今回の症状の主な組織である
「坐骨神経」について少し掘り下げていきます。

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<走行から考える下肢の神経症状>
下図に示すように、
梨状筋により上から圧迫された坐骨神経は梨状筋を通過後、その他の深層外旋六筋により突き上げられる走行をしています。

これも坐骨神経へのメカニカルストレスとなるため、症状が梨状筋によるものだけでなく、その他の外旋筋との関与も考えておかなければなりません。

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■機能評価

梨状筋によって圧迫されているのか?
なぜ梨状筋によって圧迫されているのか?

を把握するために評価をしていきます。
これが運動療法を選択するための重要なポイントです。

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