見出し画像

肘・手関節からみる肩関節-挙上動作に導く戦略-

臨床+.3週目を担当する佐藤康です。
今月の臨床+.のテーマは「他関節からみる肩関節」を配信しています。

肩関節(肩関節複合体)は上腕骨・肩甲骨・鎖骨・肋骨など多くの組織により構成されます。つまり、これは全身となるさまざまな部位の影響を受けやすいということが言えます。

肩を診るうえで、肩の局所的な介入のみでは
改善しないことを経験したことのある方も多いと思います。

画像16

姿勢・運動連鎖など他関節の影響を考慮した評価・介入が必要となるため、今回の記事で私は肩関節の遠位部位である肘・手関節から導く挙上動作の見解について解説していきます。

画像1

「肩」の局所評価を深めたい方は8月の配信記事にございますので、併せてご覧いただけたらと思います。


■肩関節疾患にみられる異常アライメント

臨床上で経験する肩関節疾患では
肩関節周囲炎や腱板損傷、野球肩など
以下のような疾患や病態が挙げられるかと思います。

画像2

上記も挙げたように外来整形分野での臨床上で対応する肩関節疾患の多くは慢性疼痛疾患が多く挙げられるかと思います。これらは、挙上・回旋を中心とした可動域制限が認められることが多く、局所的なアプローチの対象となることも多いです。

また、挙上制限を認める肩関節では、肩関節周囲筋の筋拘縮や関節のインピンジメントが問題としてよくみられます。これらにより、骨頭の求心位を逸脱した関節運動をはじめ、異常な動態での挙上動作を招く要因となってきます。

|臨床で多く観察される肩挙上動作


画像3

後述していきますが、
これらの代償動作は
上肢の外側組織が優位に活動した場合に多くみられます。

|荷重位での上肢動作

画像24

運動療法でよく用いる四つ這いを例に挙げていきます。
四つ這い姿勢では手から肩・体幹に力を伝達するため、骨性(関節)の支持が求められます。骨性の支持が十分に行えるためには、手関節背屈・前腕回外・上腕骨外旋により肩甲骨が浮かずに安定できることを目指します。

異常なアライメント形成として、上記関節運動に制限があると、尺骨側に荷重が偏位し肩甲骨挙上などの代償した四つ這い動作になることが観察されます。

■機能的な挙上動作を考える

挙上動作を十分に行えるためには、
まず肩関節の運動を押さえておきます。

Point
➊骨頭求心位
➋協調的な肩甲骨運動

画像5

|骨頭求心位に保持できる関節運動
肩関節運動として、関節窩に対して骨頭が求心位に保持できておく必要があります。肩関節周囲炎などにみられる挙上制限では骨頭の異常運動がみられることがほとんどです。

いわゆる骨頭位置が上方に偏位し、肩峰に接触したインピンジメントを招き可動域制限をきたします。骨頭を求心位に保つことができないと腱板を中心とした単関節筋に対し多関節筋の活動が優位となり、骨頭の位置異常による関節運動をきたしやすくなります。

そのため、求心位を保持できる関節運動が必須となります。

|協調的な肩甲骨運動
挙上動作の範囲における骨頭の位置を求心位に保つためには、上腕骨に対する肩甲骨の運動が協調的に動くことが求められます。

画像6

肩甲上腕リズムでも挙げられる2:1の動きにも言われる運動には肩甲骨運動が重要となります。協調的な肩甲骨運動をつくるためには、上腕骨の運動に併せ、肩甲胸郭関節の安定に関与する筋機能を構築していく必要があります。

|挙上動作の目標
挙上動作は関節可動域が最終域まで行え、最終域での筋出力が発揮できることを目指していきます。この動作を十分に行えるためには、上記の局所機能+遠位から促通した協調的な筋活動が求められます。

画像7

■異常アライメントをきたす他関節の影響

今回のテーマである上肢機能では
肘・手関節と肩関節の関係について整理していく必要があります。

遠位に問題があるのはどのようなケースでしょうか?
前項でも紹介した挙上動作を例に考えていきます。

ここから先は

3,083字 / 21画像
毎月1回のオンラインセミナーの開催とアーカイブ配信 隔週で運動器疾患に対する理学療法評価・徒手・運動療法をテーマに動画を中心とした記事を配信していきます!

臨床+

¥500 / 月

運動器疾患を担当するセラピスト向けマガジン! 経験豊富な6人のセラピストがオンラインセミナーを中心に教科書だけでは解決できない臨床の悩みに…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?