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過度な目標への執着は危険!? 『空へ、エヴェレストの悲劇はなぜ起きたのか』から得られる教訓をまとめてみた

ジョン・クラカワー著、『空へ・エヴェレストの悲劇はなぜ起きたのか』、この本はビジネスの観点において、さまざまな教訓を示唆してくれていると思い、度々読み返しています。

今回は、示唆される観点をいろいろな角度からまとめておきたいと思います。

① リーダーシップに関する示唆

 登山隊のリーダーたちが、リーダーへの絶対服従を強要し、メンバーの意見を受け付けなかったことが失敗へのいったんを担ったと思われます。リーダーの判断が正しい場合は物事が上手く回りますが、誤った判断を盲信することは取り返しのつかない致命傷を負う可能性があります。それに加え、危機的状況に陥った時に判断や責任を明確に伝えられなかったことが挙げられます。ビジネス現場においても、リーダーは目標や方針を明確に示し、メンバーの多様な意見を参考にリスクを事前に分析、状況に応じて迅速に意思決定を行う必要があります。

② メンバーのスキルとチームワークに関する示唆

登山隊の参加者には、経験や技術が不足していたメンバーが存在し、また個人の目標や利益を優先するメンバーもいました。これらは、登山の安全性や成功率を低下させる要因となりえます。ビジネスでも、個人の能力を高めるとともに、チームワークを大切にすることが重要です。

次ぎに、行動経済学の観点から、この事故について考えておきたいとおもいます。

③ 確信バイアス

登山隊のリーダーたちは、経験や技術に過剰な自信を持ち、天候や体調などのリスクを過小評価してしまいました。また、自分たちの計画や判断を正当化するために、都合の良い情報だけに注目する確信バイアスに陥っていました。このバイアスは、とくに危機的な状況において正常な判断を妨げる可能性があると思います。

④ 集団思考

登山隊のメンバーたちは、リーダーの意見と他メンバーの行動に従い、本音や疑問を表明しない集団思考に陥っていました。この現象は、個人の判断力や責任感を低下させる可能性があると思います。

⑤ 損失回避とサンクコスト

登山隊は、エヴェレストに登頂するという目標に固執し、引き返すという選択肢を避けてしまいました。これまでに投資した時間や労力、費用などを無駄にしたくないというサンクコストが関係しています。サンクコストは合理的な意思決定を阻害する可能性があると思います。

昨今、製造業界に見られる不正行為からもわかるように、過度な目標(KPI)へのコミットメントは現場の意思決定に悪影響を及ぼす場合があると思います。その観点からも本作は示唆を与えてくれています。

⑥ 目標の固執と柔軟性の欠如

事故の当日、多くの登山者たちは、エヴェレストの頂上に到達するという目標に固執し、安全な時間や体力の限界を無視して登り続けました。その結果、下山時に猛吹雪に巻き込まれ、多くの犠牲者を出しました。目標に過度にこだわり、状況に応じて判断や行動を変える柔軟性を欠くと、危険な状況に陥りやすいという教訓を示していると考えています。近年のビジネスでも、目標達成やKPIの達成に固執し、顧客のニーズや市場の変化に対応できない企業や組織が多く見られます。これは、競争力の低下やイノベーションの停滞に繋がるかもしれません。

⑦ 倫理と責任の放棄

登山者たちの中には、自分の命を優先し、他人を見捨てる行為がありました。登山では自己責任が重要視されますが、チームワークで物事を進めている場合、倫理と責任の放棄は、人間性や信頼を失うという教訓があります。近年のビジネスでも、利益や成果を優先し、バレなければいいだろうという、社会的な倫理や責任を無視する企業や組織が実際に表面化されてきています。

本作は、昨今のビジネスに対する問題点を総ざらいしていような教訓を残してくれています。ぜひ二度、三度読み返して考えを巡らせて頂ければと思います。


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