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「エサキモンキツノカメムシ」ハートを背負うクサい虫

激クサ虫なのに
プリティな模様

 先日、いつものように洗濯物を取り込んでいると、カメムシの青っぽい激臭が立ち込めてきました。「またか……」と臭いのもとを探していると、いつもみるカメムシとはちょっと違う、プリティな模様のカメムシがそこにいました。

エサキモンキツノカメムシ

 フォルムはカメの甲羅みたいな背中の、普通のカメムシ。ですが、その背にピンク色のハートマークが浮かんでいます! このカメムシは「エサキモンキツノカメムシ(Sastragala esakii)」という種類で、存在は知っていましたが実際にみたのは初めてです。みつけた瞬間、SNSでだれかから「いいね」を押してもらったように、ちょっと嬉しくなりました。

70〜80コもの産卵数
孵化しても守り続ける母の愛

 私がいつもみるカメムシと比べると、その模様がどれだけ特徴的か一目瞭然です。こんなにもあっさりと出合えたので、そんなに珍しい種類ではないのかと調べてみると、北海道から九州まで分布していて、平地から山地でよく確認されるそうです。私がエサキモンキツノカメムシと出合ったのは晩春ですが、11月頃にも越冬のため家屋内に侵入するとのこと。

いつもみるクサギカメムシ

 最大の特徴としては、母親が卵や子どもをずっと守り続けるという生態です。葉っぱの裏に卵を70から80コ程度産卵した母親は、その卵塊に覆いかぶさるようにして卵を守ります。その間ずっと飲まず食わずの状態で、卵が孵化した後もしばらく子どもを守り続けるそうです。その習性を知ると、背中のハートは母親の愛情の象徴のように感じられます。

クモ類もハサミムシも
子育ては母親の役目

 1匹迷い込んできたということは、この近くにエサキモンキツノカメムシが育ちやすい環境があるのかもしれません。6月頃なると卵を守るメスの姿が、ミズキの葉などでみられるそうなので、これからの時期に観察できればと思っています。

 こうした「昆虫の親による子の世話」については、このエサキモンキツノカメムシだけでなく、クモ類やハサミムシ類で確認されるそうです。これらの昆虫類は母親だけが子育てをして、父親が子育てをする昆虫はコオイムシ類やウミグモ類くらいだとされています。

 自然界でなにか大きな変化が起きたとき、もしかすると昆虫の世界でも子育ての男女平等が進むようになるのでしょうか。そんなことを思いながら、子育て上手なこの昆虫を(オスかメスかもわからないままですが)、そっと外に逃してあげました。

翅を広げるエサキモンキツノカメムシ

 カメムシの闖入に悩まされる季節。あの異臭を感じたら、母性が強いこのエサキモンキツノカメムシが潜んでいるかも、とわくわくしながら探してみてください♪

 カメムシについては別の投稿もありますので、未読の方はぜひ読んでみてください♪

参考文献
・野澤雅美『カメムシ おもしろ生態と上手なつきあい方』農山漁村文化教会 2016年
・野村昌史(2015)「あれも見たい!これも撮りたい!〜私の昆虫撮影記〜(その6 卵を守る昆虫)」植物防疫 第69巻 第7号
・長崎大学HP「虫の世界もイクメンがモテる!コオイムシ類のパートナー選びが明らかに」2016年5月6日配信 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science106.html

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