「タケ」森を侵食する植物の使われ方
「地下茎」により拡大する竹林
近くの山辺に竹林があるのですが、最近「こんなところまで竹林だったかな」と疑問に感じます。気になって調べてみると、管理されずに放置された竹林が拡大していて、森林が徐々に竹林になっているそうです。
タケ(タケ亜科Bambusoideae)は地下に茎を伸ばす植物です。この茎は「地下茎(ちかけい)」と呼ばれ、成長するとタケノコが発生します。タケノコはほかの植物と違って地下にある貯蔵養分を利用するため、日光が入りにくい暗い林床(りんしょう)でも成長することができます。
竹林の地下茎が伸びて森林に侵入すると、ほかの植物たちよりもタケノコがほうが早く成長してタケとなり、ほかの植物たちよりも丈が高くなります。そうすると、タケが日光を遮ってしまって、本来成長して樹木となるはずだった植物たちが育たなくなり、いつしかその場所も竹林となってしまうのです。
竹尺や竹串として活用されるタケ
竹林が多くなったなら、資材として活用する必要があるでしょう。そういえば、と思い立って押し入れを開けると、小学生の頃に使っていた竹尺がみつかりました。今ではプラスチック製品の定規が一般的ですが、昔はこの竹製のものが使われていました。
竹尺は現代では一般的な製品ではないかもしれません。ですが、現代でも竹製品はいくつかみつかります。たとえばおでんの具の牛すじは、竹串に通して煮込みます。環境に配慮した製品として竹箸も使われています。プラスチック素材と違って自然由来の資材であるタケは、丈夫ながら自然に分解されることがメリットとして挙げられます。竹林の新しい活用方法や木竹混交林の整備方法について、現在農林水産省や林野庁が積極的に取り組んでいます。
世界に1400種類 国内活用だけでも3種も存在
文具や台所用品として使用されているタケですが、じつは「タケ」と言ってもその種類は世界に1400種類以上(タケ類およびササ類のタケ亜科植物)も存在し、日本で活用されている主要な種だけでも3種類あります。また、その3種類もそれぞれ特徴が異なるため、活用方法にも違いがあります。改めて私がよく目にするタケを観察してみると、
・節が二重になって、やや膨らんでいる
・稈(かん)はやや灰緑色
・表皮が粉を吹いているようにみえる
といった特徴から、おそらくハチク(Phyllostachys nigra var.henonis)と思われます。
その活用方法を調べてみると、比較的軟らかな性質から、茶せんや提灯といった伝統的な用品に使われているそうです。茶せんは茶道において、お茶をたてる際の茶道具です。日本の古い伝統を守ることが、巡り巡って竹林を有効的に活用することに繋がり、結果として森林を守ることに繋がるのだと実感できます。
参考文献
・農林水産省『aff 2011年3月号』
・林野庁『竹の利活用推進に向けて』2018年
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