見出し画像

私はハチのようになりたい

毒と針を有することで
大型生物すら脅かす

 生き物は全般的に好きではありますが、じつは虫は苦手です。山の近くに住んでいるせいで、夜眠っているときにムカデに刺されたり、夏場はゴキブリがキッチンに出てきて不衛生だったりと、実生活を脅かす存在だからです。

 それでも、彼らが自然界でどのように生きているのか、人間とどのようなかかわりをしてきたのかなど、虫たちに対してインテリジェンスな関心は抱いています。身近で観察も容易な生き物だからこそ、私にたくさんのことを教えてくれる存在だと考えています。

 とくにハチに対しては、恐れと憧れの双方を抱いています。小さい体で、大きな生き物でさえも集団で怯まず襲う。そして、その針で敵を貫き、毒嚢(どくのう)に蓄えた毒を流し込んで確実に仕留める。不吉な羽音を鳴らしながらこちらに向かって飛んでくるその姿は、「殺意」という言葉そのもののように感じます。

葉の上で翅休めしているアシナガバチの1種

 ですがハチは、こちら側から刺激さえ与えなければ、基本的には襲ってこないとされています。彼の針と毒は、巣を守ったり、自分の身を守ったりするための、とっておきの武器なのでしょう。

たいせつなものを守るときに
きっちりと刺せるように

 繰り返しになりますが、私は虫が苦手です。でも、虫は私に忌み嫌われていたとしても、厳しい自然を生きて、命を次に託していくだけにすぎません。ヒトの世情にかかわりなく、虫たちはほかの生き物同様、ただ守るべきを守り、懸命に自分たちの生涯をまっとうしています。

 同じヒトなのにあまりにも住む世界が違うと、考え方や価値観に乖離を感じることがあります。そうしたヒトたちに対して、自分のことをわかってもらおうと、理解を求めてしまうことがあったと、私自身のこれまでを振り返ることがあります。そうして大概が理解を得られないまま、虚しく終わることが多々ありました。

 そうした反省をもとに私もまた、価値観の異なるだれかから守るべきものを脅かされない限りは、私の人生に集中して生きていきたいと思います。ただ、もし、私のたいせつなものを脅かす者が現れた際には、胸に抱いた針できっちり刺せるよう心づもりはしておきたいです。刺したあとは、私が持っているだけの、ありったけの毒をしっかりと流し込んで。

アシナガバチの1種。
黄と黒の体色に危険さが漂う

 反対に私もだれかを誤って脅かしてしまわないよう、言葉や振る舞いには気をつけていきたいものです。ヒトはだれしも胸に針をかくし持っているものだと、うっすら気にしたほうがいいのかもしれませんね。


サポートいただきましたら、今後の活動費用に使いたいと思っています! 素敵な記事をたくさん書いていきたいです!!