見出し画像

それはまるで子どもたちがつくった町のような学校 #こんな学校あったらいいな

ここは東京都品山区立 川中小学校。
都会のどこにでもある普通の公立小学校のようで普通じゃない。

この学校には
ランドセルを背負った子どもがいない
チャイムは鳴らない
自分の座席も決まってない
時間割もあってないようなものだ
放課後は他の学校からたくさんの子どもが集まってくる
先生じゃない大人もお年寄りもたくさん集まってくる
子どもが開いたお店や畑がある
そして、宿題がない

そこはまるで子どもたちがつくった小さな町のようだった。

毎朝、子どもたちが元気に登校してくる。
でもだれ一人としてランドセルは背負っていない。
みんな自分の好きなバックやリュックに好きな格好をしてやってくる。
中に入っているのは筆記用具とノートとiPad、首にかけたおまもりケータイだけ。

朝会が始まる時間に担任の先生がすっと教室に入ってきた。
チャイムは鳴らない。

そして、子どもたちは教室の好きな場所に並べた机といすに座っている。
仲の良い友達と机をつけて輪になったり、眺めの良い窓際に机を並べたり。
30人クラスのうち、教室にいるのは20人くらい。
残りの子どもはどこにいるんだろう?

先生は「おはよう」とあいさつした後、自分のiPadを開いてオンラインで出欠を取り始めた。
「まこちゃんは今日は家からだね?」
「は~い!田舎からおばあちゃんが来てるんだよ!!でも放課後はおばあちゃんと一緒に学校に行くよ。お料理教室に参加するんだ~。」

「せんせ~、ゆうきくんは廊下のフリースペースにいたよっ!」
「あ、ほんとだ!?(画面越しに)ゆうきくん、おはよう~!!」

「じゃあ、みんなそろってるね。」
「それじゃあ、今日一日何をするか自分で時間割を決めてみよう。」
「教科は国語、社会、算数、英語、理科が入ってるけど、前回の続きからどこまで進められそうか、まずは自分で考えてみて。」
「(一斉に)は~い!!!」

「せんせ~。私、今日は校庭の花壇でお絵描きしたいな。昨日見たらキレイなお花が咲いていたからスケッチしたい。」
「おっけ~、じゃあ水分補給は忘れずに。あとiPadの電源はONにしておいてね。ちなみに、今日の英語はゆいちゃんの好きなDave先生だから、あとで授業の録画を観たらいいよ。」
「うん、わかった!!」

この学校でもいちおう時間割らしきものはあるが、みんなが教室に座って同じ時間に同じ教科の勉強はしない。
1年間を通して各教科で達成したい学びの目標は決まっていても、「今日何を学ぶか?」はあくまで一人一人が自分で決める。
得意な科目を先の分まで進めてもいいし、苦手な科目を克服するのにじっくり時間をかけてもいい。
(算数をやりきって中学の数学に取り組んでいる子もいる)

2020年のコロナ禍で、今までの学校は無くなった。
キョウイクイインカイのエライ人や先生たちが気づいたらしい。
学校で決められたルールなんかほとんど必要ないってことに。
教室の中で黙って座って先生の授業を聞く勉強なんかぜんぜん楽しくないってことに。
先生が黒板と教科書ばかり見て、みんなの目を見て話していないってことに。
得意なことや苦手なこと、好きなことや嫌いなことはみんな違うってことに。

いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうが良いってことに。

だからみんなにiPadが配られて、勉強はYoutuberみたいな人がオンラインで楽しく教えてくれるようになった。
学校に行きたくない日は家から勉強しても良いことになった。
先生は勉強を教える人からクラスで一緒に遊ぶ友達みたいになった。
クラスでは友達に教えてもらったり、友達に教えてあげたり、誰が先生かわからなくなった。
教室はみんなの笑顔と笑い声でいっぱいになった。

そして、いじめで学校に来られなくなった友達が戻ってきた。

「せんせ~、この問題はどうしてこういうやり方で答えを出すの?」
「どうしてだと思う?」
「う~ん、こっちのほうが良いと思ったんだけどなぁ。。。」
「確かにそういうやり方もあるね。じゃあこっちの問題はどうだろう?」
「あっ!!だからこういうやり方の方が良いってことなんだね!?」
「正解は一つじゃないから自分で問題を作っていろいろ試してごらん。」
「わかった!今日の夜にパパと一緒にやってみるね。」

もう、先生から宿題が出されることはない。
宿題も自分で決めている。もちろん無しでもいい。

「さぁ、今日の授業時間はこれで終わりだよ。」
「まこちゃんはどうだったかな?」
「おばあちゃんと一緒にお勉強したよ。私が教えてあげたりしたの、えへへ。(照)」

「ねえねえ、ゆいちゃんはどんな絵が描けたの??見せて見せてー」
「スマホで写真撮ってアップしたよー」
「最初はお花をスケッチしてたんだけど、途中から違うものになっちゃった(笑)」
「お花みたいなお城が描けたんだね~。ステキだね☆」

放課後になると子どもたちは元気にクラスを出て行った。

校庭ではサッカーと一輪車をやっている。
今日は近所に住んでいる大学生のお兄ちゃんがコーチをしてくれた。
この間なんか元プロ野球の選手が遊びに来てくれて、どんな風に練習したらもっと速いボールを投げられるか教えてくれた。

体育館ではバスケットボールとダンス。
理科室ではドライアイスを使った面白い実験。
絵画、料理、カードゲームをやっている部屋もある。
一人で本を読む子もいれば、お友達とおしゃべりしている子もいる。

みんな思い思いの放課後を過ごしている。

ほかの学童と違うところは、毎日いろいろ場所でいろいろなプログラムがあって、参加するのもしないのもぜんぶ自由なところ。
外の学校からもたくさんの子どもが参加してて、放課後だけ会える友達がいるところ。
みんなの「スキ」とか「やりたい」がプログラムになるから、子どもカフェでコーヒーをいれたり、校庭の裏の畑で野菜を育てたりしているところ。
そこに近所の大人やお年寄りも参加していて、プログラムの先生をやってくれたり、反対に生徒になって子どもと一緒に学んだりしているところ。

聞いた話だと、子どもだけじゃなくてお年寄りにも習い事があって、運動とか音楽とかダンスとか中身はそっくりなんだって。
だから、この学校にはいろんなプログラムがあるし、子どももお年寄りも一緒に参加できるんだね。

おじいちゃんはコマ回しを教えてくれたり、
おばあちゃんは料理やミシンが上手だし、
魚屋さんはヒラメとカレイの見分け方を教えてくれたし、
大工さんにはウサギ小屋のつくりかたを教わった。

パソコンとか英語とか、自分の方が上手にできることは教えてあげたりもするんだ。
教えたり教わったりの学び合いってすごく楽しいよね。

この学校は、まるで小さな町みたい。

「ただいまー!」
「おかえりなさい。今日は学校でどんなことしたの?」
「子どもカフェで店員さんをやって、カスミおばあちゃんが来てたからコーヒーいれてあげたんだ。カスミおばあちゃんにはいつもお砂糖とミルクをつけてあげるの。でも膝が少し痛くてダンス教室に参加できないって言ってた。。。」
「それは心配ねぇ。どうしたらおばあちゃんもダンス楽しめるかしら?」
「うーん。あんまり動きが激しくないやつなら出来るかなぁ。」
「そういうのは誰が詳しいかGoogle先生に聞いてみたら?」
「わかった!!あ、近くにジムがあったでしょ?今度トレーナーの人に取材してもいいかも?」
「それは良いアイデアね~。」
「もし聞いてもわからなかったら、自分たちで作っちゃえばいいしね!!」

この学校では世の中にいろいろな人がいることを自然と学ぶことが出来る。
見た目も、性格も、年齢も、性別も違うけど、学校の中でみんなが好きなことに参加して思い切り楽しめる。
話が合わなかったり、一緒に遊べないこともあるけど、一人一人違うんだから、そんなの当たり前だってみんな知っている。

いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうが良い。

あなたの好きなこと、やりたいことは何ですか?
いま何をしているのが一番楽しいですか?
今年の夏休みはどんな風に過ごしましたか?
そして、あなたは将来どんな大人になりたいですか?

ここは東京都品山区立 川中小学校。
都会のどこにでもある普通の公立小学校のようで普通じゃない。
そこはまるで子どもたちが作った小さな町のようだった。


今は何者でもない、あるいは見知らぬ私の挑戦を読んで下さり本当にありがとうございます。 あなたのフォローやスキが本当に励みになります。