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松下幸之助の水道哲学

こんばんわ。今回は、しばらく前からなんとなく書きたかったテーマです。

松下電器産業、今のパナソニックですが、創業者の松下幸之助という経営者の有名な思想があります。「水道哲学」というものが、それです。

水道哲学とは、松下電器産業(現パナソニック)の創業者・松下幸之助が提唱した経営哲学だと言われている。
水道の水のように安価ですぐに手に入るものは、生産量や供給量が豊富であるという考えから、商品を大量に生産・供給することで価格を下げ、人々が水道の水のように容易に商品を手に入れられる社会を目指すという考えのこと。

これ、立派な考えなんですよね。今だと、「教育の水道哲学」を謳うEラーニング研究所なんて会社もあります。ネットを通じた教育によって、対面授業から教育を解放し激安で提供しようということです。

ある意味パソコンの水道哲学を実践したのが、スティーヴ・ジョブズですし、スマホの水道哲学を実践したのが孫正義でしょう。T型フォードを普及させたフォードもそうですね。

ところが、高度資本主義ではこういう考え方が段々通用しなくなります。水道哲学は、環境破壊に繋がっていきます。象徴である水資源もいまや貴重なのです。

それから人々の生活が豊かになるにつれて、誰にとっても必要な有用性の感じられる商品、サービスが徐々に見分けにくくなります。

これに関連して松下電器は、しばしばマネシタ電器と揶揄されていました。よく読むと、水道哲学はスケールメリットの哲学です。だから松下幸之助は、他社の商品を模倣することを躊躇いませんでした。他社の模倣品でも、大量に市場に供給することが人々の生活を豊かにすると信じていたからです。

だから、自社の商品にオリジナリティを求めなかったのです。そういうのはアメリカの会社やソニーに任せて、うちはデカい会社だから後から参入して模倣品でシェアを取ればいい、という経営方針になっていたのです。これは後進国から中進国の企業の発想ですよね。

高度資本主義にそぐわない水道哲学のこういった側面もあり、パナソニックは松下幸之助の思想から離れて社名変更に至ります。

最近では、台湾や中国、韓国の経営者にとても高く評価されていたりします。これらの国は、まだ十分な生活必需品が行き届いていないこと、人件費が安く、グローバル化された世界において多くの発展途上国を輸出先として確保できること、こういった背景から、幸之助の水道哲学がぴったりフィットするのでしょう。この辺りは、世界的なデフレの背景にも繋がっていると思います。

ちょっと話が飛びますが、脳の構造には旧脳が司る自律神経系と、認知や記憶、情感を司る大脳新皮質という新しい部分があります。

松下幸之助が水道哲学で想像していた商品、サービスは自律神経系、旧脳的な部分だったのではないでしょうか。高度資本主義(ポストモダン社会、脱工業化社会)は、大脳新皮質的な新しい脳のような部分だと思うのです。

つい現代に生きていると松下幸之助の思想なんて古いでしょと切って捨てたくなりますが、それでは資本主義の逞しさを見落としかねないと思います。大脳新皮質は、旧脳がないと活動できないのと同じことです。環境破壊を恐れて、企業活動を停止させては本末転倒となります。オリジナリティを追求しすぎて、売れない商品を量産し続けるのもおかしなことです。

先に述べたような欠点はあるものの、現代でも松下幸之助の水道哲学自体は非常に参考とすべき点が多いと思います。

頂けるなら音楽ストリーミングサービスの費用に充てたいと思います。