大学職員だった時のハナシ その2

壁を越えてしまう

 某金融案件でボロボロになったオッサンを大学の同期が助けてくれたが、リハビリに放り込まれた場所は大学のIT関連部署だった。

ギークとオッサン

 オッサンを助けてくれた大学の同期は准教授をやっていて、この准教授(以後、ギークを呼称しよう)もオッサンと同類である。控えめに言って社会不適合者である。もう1度書く。控えめに言って社会不適合者である。

 オッサンは、大学1年の時に研究室で(母校は1年生の時から研修室に入れた)ギークと出会ってしまったがためにプログラマーの道を諦めた。ギークみたいな人間がプログラマーになるんだろうな、俺はプログラマーに絶対になれないと勘違いしてしまった当時18歳のオッサンは、大学院生をリーダ(通称仙人)とする学生有志と共に深夜に研究棟の屋根裏をLANケーブルと圧着機を持って這いずりまわり中古のL2スイッチやルータを整備して、無許可で勝手に大学研究室棟を完全NW化するという偉業をもってインフラエンジニアの道を歩み始めることになる。ちなみにその場にはギークもいた
 整備された基幹NWはエロ画像のデータ収拾などに多大な貢献をすることで、聞きつけた大学4年生が自主的に研究棟に集まるという副次効果を生んだ。今年の学生は真面目で卒研が捗ると勘違いした教授が喜び、勝手にNW化したことについては、お咎めがなかったという、はるか昔の1990年代のハナシ。
 
 いくつかの経緯を経てIT業界に紛れ込んでしまうことになり、ようやくギークが特別な人間だったというだけで、プログラマーになる人は全員ギークみたいな人間ではない、ということに気が付くが時すでに遅し。

 そんな古い付き合いがあるギークは学内ITを何とかしたくて弱り切ったオッサンを引きずり込んだ。部長教授と色々なコトをやって、オッサンの職員枠を確保し、リハビリと称してオッサンを飼い慣らし、学内IT推進の前線に投入する計画を立てた。汚いなさすが教員きたない。

 前線に投入したかった理由は、耐震基準関係での校舎の立て直しが絡んででいた。大学ではこのあたりのハナシはよくあるらしい。検査をして古い建物が耐震基準にうんちゃらかんちゃら。
 大学内のことをあまりよく知らなかったオッサンにとっては他人事なので全く興味がないハナシでスルーをしていたのだが、そうもいかない理由が明かされる。校舎を取り壊すにあたり発生するナイアガラの撤去。古い校舎ということは最初にITが整備された場所でもあり校舎間をつなぐNWの基幹としての役割を持っていた。ナイアガラをなんとかしないと全学のNWが停止し使えなくなる。
 これをまともに業者に発注すると億のカネがかかるが、職員にやらせれば圧倒的に低コストでできるってハナシだな、汚いなさすが教員きたない。

 それでも職員食堂でメシを喰って、タバコを吸っている以外の暇つぶしにはちょうどいいので取り組み始めたのだが、単純なハナシにならないのが大学という組織。

大学職員PC・全・・無線・・化・・?

 大学の職員が使っているPCを全て無線化しろというお達しが下ったのはナイアガラの攻略を進めてしばらく経った頃である。
 
 なんでも、凄くエライヒトがLANケーブルを踏みつけたか引っかけたかで、PCを壊して何か大切なデータをロストしかたか何かの事故が起こったかで、凄くエライヒト独断の勅命でNWケーブルを全て撤去しろ、騒ぎ出したのがきっかけだったらしい。
 やっぱり意味がわからない。当時は理解ができなかった。
 後に何が起こったのかが発覚し、それは職員PC全無線化を進めるという判断が出るのも止む無し、というレベルのヤバ過ぎる事件なので書かない。

 とりあえず、校舎の簡単に見えるトコロにNWケーブルを使うな、全て撤去しろという無茶難題が降って来た。大事である。
 ただ、潤沢に使えるカネも用意されたので、さっそく取り掛かろうと申請した予算に待ったがかかる。
 単年度会計の罠である。貰ったカネは年度内に使い切らないといけない。お残し厳禁。持ち帰りも不可。お代わりもダメ。

 エライヒト勅命なので、必要な額よりも桁が1つ多い予算が用意されており、どうやっても使い切れない。さてどうしたものかと困っり果てて、喫煙所に逃げ込みタバコを吸っていると、顔なじみの警備員さんがやってきてタバコに火を点ける姿を見て使っていない倉庫のハナシを思い出した。

 あの部屋をデータセンター化した後に、NW基幹を移設して、ついでに全部の建屋の間を高速回線でつないで、全部の建屋にWifi使えるように機器を設置したら、予算使い切れるんじゃね?
 案の定、いい感じで予算枠が埋まってきたが、まだ使い切るには額が足りない。工事や作業発注するには足りなくて、モノを買うだけなら十分な微妙な額が残った。
 
 うーん、とオッサンが使い道を悩んでいる数日間の間にひっそりと予算が通っていたのだが、この予算を埋め申請をしたのがギーク。
 2Uのサーバを数台とストレージ、10G対応のスイッチ、という機械だけを買っていた。そのサーバには500Gを超えるメモリが搭載されていて、10GのNICが何枚か刺さっている。ストレージには1テラのSSDが満載。

 喫煙所でギークがオッサンにその機器の発注書を持って来て渡してきたのだが、まぁ、何のために買ったのか理解できない。こんな意味不明な構成のサーバや機器を何に使うんだろと。一般企業でも見たことないゾ。

 仮想基盤を作ってもらおうかと思ってさ。機械だけあれば、人件費はかからないから。

 オッサンに作れということらしい。汚いなさすが教員きたない。

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