フリーエンジニア 住む部屋が無くなりそうになった時のハナシ その2

きちんと計画してもどうにもならない

 前回までのあらすじ。
 ハッキリ言って読む価値はないので、スルーした方がいい。

嵐の前の静けさの7月

 そろそろ辞め時かと思っていたので、転職活動をしていたのだが昨今のリモート面接は非常に効率がよく、それなりに数の挑戦ができて、ありがたいことにこんなポンコツに声をかけてくれる会社はそれなりにあった。エンジニア転職35歳限界説は嘘だな。40でもまだまだ余裕でイケる。年収は下がるし仕事はオンサイトでの金融系常駐とかいう面白さの欠片もない感じになるけれど。いい背広を着ればいいコードが書けるならアルマーニでもプラダでもシャネルでも着てやる。

 変わったところだと、週休3日というエンタメ系のエンジニアの内定や、今まで聞いたこともない業界のエンジニアの求人も内定も頂いて、まだまだ俺もやれるなぁ、なんて思いながらチョーシにのって有名外資IT企業なんかを受けると瞬殺されるのはご愛敬。それでも転職活動をするたびに思うことがある。
 転職活動は合法的に色々な他社の情報を拾えるので楽しいな、と。

 それでもフリーのエンジニになってしまったのはチョットした因果のモツレというか業になるんだろうか。純粋に月額報酬に目がくらんだ
 
 親切丁寧で素敵な声を持つ美人営業から斡旋された案件は、完全リモートワークで仕事内容的に十分に余裕を持って仕事ができる種類のものだった。
 フリーの一番いいトコロは、自分の仕事以外の社内業務を一切放棄出来ることだろうか。よく分からないフリをして受発注をスルーしてプロパーに擦り付けられるのはとてもいい。
 顔出ししないWeb会議の文化も気に入った。
 最後の最後に単価を値切られたけれど。値切られたけれど。

嵐が来た。文字通りに。

 マンションに住んでいれば、隣人の入れ替わりというものはどうしても発生するし、幸いなことに隣人がいつ引っ越してきたのかすらも分からないような静かな物件だった。

 だったのである。

 新しい隣人はそこを超越した。
 詳細は割愛するが、
 ・壁に寄りかかるようにロフトベッドを設置
 ・窓を開けてド下手糞な歌を深夜に大声で歌い上げる
 ・ルームランナー+リズミカルなテクノ音楽の大音量
 ・ダンベルを放り投げる
 などの凶行に及んだ。

 管理会社に切実に訴えると

 「この住人の方は電話もメールも通じないし、手紙も見ないんですよ

 他の住人からもよっぽどクレームがあがったのだろうか。
 住人がダウンする前に、この担当者の方が長期休養となってしまう。

そうだ、今こそ旅立つべし

 仕事は順調だったものの夜に寝れないのは正直しんどい。ブラウザの検索に不穏なワードが並び始めた頃、静かな場所という言葉の連想で地方移住のことを思い出した。
 ここ脱出したくて仕方がないので、片っ端から連絡を取り手当たり次第に内見申し込みを行い始める。金曜日に家をでてホテルに泊まり土日も含めて色々な地方を見て回る。うるさくて寝れない家に居たくなかったからではない。不穏なワードを実行しそうになるのを抑えるクールタイムである。
 
 都心から少しはなれると人が少なくてゴミゴミしてないので気分がいい。
 心なしか空気も美味く感じる。
 何よりも静かである。
 
 さらに、
 コロナ禍が終わっても常駐案件を請ける気がないフリーのエンジニアなので東京までの通勤は一切考慮しなくていい。それでも出社する必要があるだろう、と心配しなければならない案件もある。
 でも、今請けているような日本全国からリモートでエンジニアが参加してきてお客さんは外国企業で外国の現地法人なんてプロジェクトだと物理的に集まれなんて招集はかからんのよね。クラウドのインフラでシステム作ってるのに物理的に集まらなきゃいけないってちょっと意味がわかない。
 
 1フロアに1部屋しかないとても素晴らしい建物の最上階の物件を見つけ、さっそく申し込みをして結果を待つ。
 今住んでいる部屋より家賃は下がる。さて、いつ引っ越そうか。

俺たちの戦いはこれからだ!

 審査に落ちる。
 どうやら年収条件が足りないらしい。

 はて。

 そんな高い家賃の物件じゃないし、月報酬1カ月分で12ヶ月分の家賃払えるように調整したはずなんだが。

 「提出いただいた源泉徴収票だと難しいです。」

 そうか。

 俺、6月に会社員辞めたから、サラリーマン時代の6カ月分の年収しかない源泉徴収票しか収入を証明できないじゃない。

 あれ?
 この金額しか年収証明できないんだとしたら、最悪引っ越しできなかった場合、今住んでるところって更新できるんだろうか?

 一度思いついてしまった悪い想像は現実化していってしまう。
 そして、この時も悪い想像は次々と現実化していってしまったのだった。


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