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カスタマーサクセスにとって、「成功事例の創出数」はKPIとして有効だという話


皆さんはじめまして!
CareMakerという在宅医療向けのVertical SaaSスタートアップにてカスタマーサクセス部門の責任者をしています、尾田(@knsn_07)と申します。

今日は、特にマネジメントレイヤーでカスタマーサクセスのチームを率いておられる方々は一度は悩んだことがあるであろう「カスタマーサクセスのKPI」について、自分なりの考えを1つシェアできればと思っております。

<このnoteで参考になるかもしれないこと>
・そもそもKPIとはどういった指標であるべきなのか
・カスタマーサクセスチームのKPIの一例と、そのメリット

<より参考にいただけそうな対象企業>
・立ち上げ期〜拡大期にあるCSチームで、単なる導入実績だけでなく導入企業の"成功事例"がまだ不足している企業
(※逆に、既に成熟期にあるCSチームで、明確なアウトカムを創出できた成功事例が既に多数ある企業にはあまり参考にならないかと思います)

1. はじめに

本題から逸れますが、初投稿なので自分の発信への想いについてだけ言及しておこうと思います。

私自身、SaaSは約3年半前にフィールドセールスからスタートしているのですが、フィールドセールス→カスタマーサクセスと経験する中で、カスタマーサクセスが特に自分の性格にはマッチしていてやりがいのある職種になっています。

一方で、カスタマーサクセスは世の中にある職種の中でも比較的新しいものであるため、まだまだ当たり前のやり方も確立されきっていないことや、定説としてはあるものの実践しきれている企業はまだまだ少ないことなども、多々あると思います。
そういった中で私自身これまで、日本のカスタマーサクセスの第一人者である山田ひさのりさん(著書:完全版 カスタマーサクセス実行戦略)をはじめとする、世のカスタマーサクセスの諸先輩方が発信されているプラクティスには、日々の業務において直面する課題に向き合う中でとても救われてきました。改めてこの場を借りて感謝をお伝えしたいです。

そういった経緯も踏まえ、日々自分が試行錯誤する経験の中で得られた学びをシェアすることによって近い課題に直面している方のヒントに少しでもなればという思いと、これから先まだまだ発展していくであろう日本のカスタマーサクセス分野を少しでも盛り上げられたらという思いで、少しずつですがnoteの発信をしていこうと思います。

2. そもそもKPIとは何なのか

タイトルにある通り、このnoteの結論は「カスタマーサクセスにとって、成功事例の創出数は有効なKPIになりますよね」ということなんですが、「そもそもKPIとはどういう指標なのか?」という問いに真面目に向き合うことが、KGIやKPIを設定する上での前提としてまず結構重要だと考えています。

私が参考にしているKPIの定義は、元リクルートで現中尾マネジメント研究所の代表をされている中尾隆一郎さん(著書:最高の結果を出すKPIマネジメント)が提唱されているものです。

私なりの解釈だと、この定義においてKPIとは本来特に以下のようなポイントを理解しておくことが大事だと捉えています。

・ポイント①:KPIはKGIの先行指標である
・ポイント②:KPIは1つに絞るべきである
・ポイント③:KPIは移り変わるものである

②や③が特に自分としては新たな学びで、それまではKPIという言葉を何となく"数値目標"みたいなニュアンスで使ってしまっていたので、本来的なKPIは自社の業務プロセスの中で今最も強化すべき部分(=弱い部分)1つに絞ってリソースを集中させて強化し、それが強化出来たらまた次に弱い部分にKPIをシフトさせていく・・といったような、制約条件理論に基づく考え方だと学んだのは結構な衝撃でした。

私自身はこの中尾さんのKPIマネジメントを新卒入社した会社で子会社の運営に携わっていた時に知ったのですが、当時は子会社のメンバー全員がこれを学び共通の前提として理解していたので、部門を超えて全員が同じ方向を向いた一体感のある強い組織が出来ていたという成功体験があります。
結果的に、そのおかげで事業も計画以上に伸長させることが出来ました。

THE MODEL型の組織が主流なSaaS企業においては、それぞれの目指す目標が異なるが故に、他部門間への配慮が欠けてしまったり部門間の衝突が起きてしまったりすることは良くある組織課題だと思いますが、組織全体で同じ方向を向くことができる「KPIマネジメント」の考え方は、SaaS企業においても組織の隅々まで行き渡らせることが出来れば、非常に強力な武器になると思っています。

※より詳しい話が気になった方は、中尾さんの本や先日PIVOTさんのYoutubeで上がっていた以下の動画を参考にしてみてください。


3. カスタマーサクセスのKPI事例:「成功事例の創出数」

前述の考え方に基づき、カスタマーサクセスのKPIを考える際には、まずは自社のカスタマーサクセスの業務プロセスを書き出し、その中で今最も強化すべき部分(=弱い部分)を特定し、それを定量化した目標に置き換えるという流れが良いと考えられます。

カスタマーサクセスにおいて一般的な業務プロセスは、大別すると①オンボーディング→②アダプション→③エクスパンションになるので、それはすなわち自社のカスタマーサクセスでは現状①〜③のどこに関連するKPIを設定するのが良いかを考えることになります。

例えばオンボーディングが弱いケースだとオンボーディング完了率をKPIにしたり、エクスパンションが弱いケースだと提案数や商談創出数をKPIにしたりするアイデアが一般的かもしれません。
もっと言うと、組織規模が大きくなるにつれてカスタマーサクセス内でもプロセスごとにチームが分かれてくるために、KPIもチームごとに分かれており、結果的にカスタマーサクセスのKPI自体が複数あるケースが多いのではないかと思います。

それをあえて「成功事例の創出数」という1つのKPIに集約した場合、以下のような状態になります。

前述の通り、KPIマネジメントの考え方ではKPIをあえて1つに絞って組織のリソースを集中させることでスピード感ある成果を出す進め方が推奨されていますが、カスタマーサクセス組織においてKPIを「成功事例の創出数」にした場合には、以下のようなメリットがあります。

メリット①:カスタマーサクセス全体で同じ視点を持った強固なチームが作れる

カスタマーサクセス組織が成長しプロセスごとに分業され、チームやKPIも分かれてくると、同じカスタマーサクセスであるにも関わらず他チームの活動をどこか他人事として見てしまいがちになることも多いと思います。
一方で、カスタマーサクセス全体のKPIが「成功事例の創出数」だった場合、オンボーディング段階では事例化することを想定してキックオフ段階での導入目的の擦り合わせの重要性をより意識したり、アダプション段階では成功へ導くためのサクセスプランを設計し、それに基づいて顧客をリードしていくアクションをより意識的に行ったり、エクスパンション段階では成功事例が創出できたらその文脈を正確に踏まえた新しい提案をすかさずしたりと、「成功事例の創出」という共通の目的をハブにして、各チームが強固に連携できる状態を作ることに繋がります。

本来カスタマーサクセスの役割は文字通り顧客を成功させることなので、成功した事例をチーム一丸となって創出するという活動自体は、カスタマーサクセスの本質的な活動であり、顧客の成功をチーム全体で喜びあえることをカスタマーサクセス組織のカルチャー作りにおいては特に重要視したいと、個人的には強く思っています。

メリット②:作る事例の条件を変えれば、事業フェーズが変わってもKPIとして機能する

単なる「成功事例」ではなく、「XXの成功事例」といったようにフェーズによって必要な事例の条件を変えていけば、「KPIは移り変わっていく」というKPIの原則に従いながらも、成功事例を軸とした中長期的なKPIの運用を行っていくことが可能です。

例えば、立ち上げ期のSaaSではまずオンボーディングフェーズの強化によるライトサクセスの事例を創出することに注力し、拡大〜成熟期のSaaSではアダプション以降に注力することでディープサクセスの成功事例を作るといった事業規模の変化による移り変わりや、ホリゾンタルSaaSにおいて当初得意だった業界での事例からプロダクトのスケールに合わせて新しい業界での事例への移り変わりなどがあります。

※ライトサクセスとディープサクセスについては、以下山田さんの記事参照


メリット③:他事業所も巻き込むことができる

KPIマネジメントの考え方では本来、特定の部門に閉じず組織全体で1つのKPIに集中するぐらい、共通認識を持ってお互いに力を貸しながらスピード感を持った改革を進めることが効果的だと言われています。

SaaSに置き換えると、現時点でカスタマーサクセスが弱いならそこを各部署でフォローし強化する→強化されて次にセールスが弱いならそこを各部署でフォローする・・といったように、部署を超えたKPIの共通認識化・連携強化を図れると、全社的に更なる結束力を増すのだと思います。

そういった視点を持った時に、カスタマーサクセスのKPIを「成功事例の創出数」するメリットとして大きいと感じるのは、「他部門にとっても直接的なうまみがある」ということです。
すなわち、成功事例があればそれを持ってセールスもしやすいし、広報やマーケティングもしやすい。その成功をサポートから機能に落とし込むには?を考えることはプロダクト開発/事業開発にも活かせてくる、といったように、カスタマーサクセス内のみならず組織全体にとってうまみがある成果に繋げられる指標なので、他部門を巻き込みやすく、よりKPIとして全社的に共通の目線を持つことに寄与しやすい点が優れていると考えます。

4. おわりに

以上、今日はカスタマーサクセスのKPIについて、そもそものKPIとはどうあるべきかという所から、私も実際に実践してみて良かった「成功事例の創出数」というKPI事例について書いてみました。
まだ十分に実証しきれていないこととして、このKPIがNRRなどカスタマーサクセスが追うKGIにどの程度のインパクトを与えているのか、という点はまだまだ探究していくべきだと考えていますので、進展があればまた書いてみようと思います。
それ以外にも、「再現性の高いカスタマーサクセスのKPIはこれだ!」というプラクティスをお持ちの方がいれば、是非会話させてください。
お気軽にXでフォローやコメント、DMでのご連絡を頂けると嬉しいです。


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