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口コミのスイッチが入りやすい商品って何?

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4章 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
(3)口コミのスイッチが入りやすい商品って何?

第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け


1.商品の特性によって異なる口コミの熱量


第4章では、第1節で口コミのスイッチが入るタイミングを読み解き、第2節では口コミがSNSを通じて伝播していく構造の解説に加え、一人ひとり異なる事前の期待(想定)と事後評価のGAPの総量が口コミが持つ力である、とご説明し、主に、口コミやレビューを「書き込む人」、つまり「発信側」に着目して口コミを科学してまいりました。

本節では、インターネットの検索エンジンを利用して、口コミ情報を入手したいと思わせる商品や、「#」ハッシュタグを用いて情報を手繰り寄せることが多い商品を取り上げ、主に口コミを「利用する側」の視点から、商品や製品が持つ性質を理解していきたいと思います。

前項では、同一商品でも、口コミが起きやすかったり、起きづらかったりするという口コミの特性をご紹介致しましたが、次に、商品が異なる場合に、口コミの発生頻度や口コミを活用する人の数に差異が生まれるものか、確認してみたいと思います。

実は、口コミが発生しやすい商品と、そうではないものを商品の特性面に着目してみてみると、口コミが生まれやすい商品、口コミを活用したいと思わせる商品と、そうでない商品が存在していることがわかります。まずは、商品の特性を、購入時の購買態度の差異からひも解くため、簡単に分類しましたので、以下の図表をご覧ください。

口コミが起きやすい

よく、マーケティングの教科書では、購買頻度や製品の単価などの差異により、消費財の購買態度が異なるとして、「最寄品」、「買周品」、「専門品」、「非探索品」に分類したりしますが、口コミの発生頻度や発生量を考えるため、本項では「最寄品」と「買回品」の2つを取り上げて、その差分を見ていきたいと思います。

上記の図表で「最寄品」としてご紹介しているのは、飲料や洗剤、加工食品をイメージしています。最寄品の特徴は、価格は比較的低価格なもので、購入する頻度(使用頻度)が高く、何度でも繰り返し購入される製品群を表しています。

購入時は、商品を探し回るような特別な努力をすることなく、ご自宅や会社、学校の近所など日常の生活行動圏にあるお買い物場所(コンビニ、スーパー、ドラッグストア)で購入する商品です。

また、計画的に購入するわけではなく、必要になった時に、お買い上げになり、購買を決めるまでの時間は短い、という特徴を持った商品が最寄品に分類されています。さて、最寄品は、口コミのスイッチが入りやすく、口コミ情報を入手したいと思わせる商品でしょうか?

答えは「否 No!」です。

前節でご説明いたしましたが、口コミは「事前の期待値や想定」と「購入後の評価」との間にGAPが生じた時に発生します。最寄品の場合、例えば、伊藤園の伊右衛門の味や香り、サントリーの天然水の清涼感といったイメージが、例えその商品を手に取ったことがない人であっても、購入者の頭の中に既に存在しているものだと思います。

そして、ボトルキャップを開け、一口含んだ時の感想も、事前の期待を大きく裏切るものではなく、多くの方にとって、想定した通りの味と香り、そして清涼感はこんな感じだろう、と事前に見積もった範囲に収まっているため、口コミのスイッチが入りずらいということを、お分かりいただけると思います。

また、最寄品については、味や香り、清涼感、活用の方法を事前にイメージできる、想起しやすいという特性に加え、価格面で低価格であり、1つ、2つ誤って買ってしまった、手に取った結果、思った通りの品質でなかったとしても、お財布に対するインパクト(ダメージ)も少なく、十分に情報を収集し、複数の商品と比較をした上で購買を意思決定する、プロセスを辿ることが少なく、結果として、情報を手繰り寄せるというアクションも起きづらい、ということが分かります。


続いて、「買回品」です。上記の図表では、家電のイメージを掲載していますが、その他アパレルや家具など、最寄り品に比べて値の張るものをイメージしています。

買周品の特徴は、最寄品と比べ、価格は比較的高価格なもので、購入する頻度(使用頻度)が低く、十分に時間をかけて購買するかどうかを決める商品です。

購入時は、商品の品質や機能、商品の特性を比較するとともに、価格についても、量販店、専門店、ECサイト、ECのモール、場合によってはC2C(メルカリやラクマ、PayPayフリマ)のサービス、価格.comといった価格比較サイトと睨めっこをしながら、一番安価なチャネルを探索することに時間をかけ、比較検討を行った先で、購買に至るものが多い、という特性があります。

さて、買周品は、口コミのスイッチが入りやすく、口コミ情報を入手したいと思わせる商品でしょうか?

答えは「正 YES!」です。

例えば、食器洗い洗浄機を購入したいと思い立った時のことを考えると、まずタイプとして「据え置き型」、とキッチンのキャビネットやシンク下に配置する「ビルトインタイプ」があり、単に価格の問題のみならず、どちらのタイプを選べばよいのか、検討する必要があります。

持ち家なのか、工事ができない賃貸住宅にお住まいなのか、設置スペースの有無や取り付ける際にうまく設置ができるかどうか水道の形状から後付けが可能なのか、調べる必要もありそうです。

そして、製品によって異なる扉の開き方も、設置場所のスペースや食洗器の中に収納するお皿や食器の数に影響がありますので、ご家族の人数や、家事で利用する調理器具(フライパンや鍋)のバリエーションも考慮して、選定しないといけません。

こういった事前の調査を経て、ようやく食洗器のメーカーや機種、タイプ、そして、新旧モデルの機能差、お財布と相談しながら希望と合致する商品を選び取っていく、という意思決定プロセスにおいて、一つ一つの疑問に対するアドバイスが欲しいな、というタイミングが数多く到来します。


他の人はどうしているのか?という疑問を解消するため、インターネットの検索や、レビューサイト(掲示板)、そしてSNSを用いて口コミを探す、情報を手繰り寄せる行為が頻発する、という特性を持っている商品だということが、ご理解いただけるのではないでしょうか?

2.情報を手繰り寄せたくなる商品を解説

前項では、情報を手繰り寄せる理由を持つ商品として「買周品」の特性をご紹介しました、本項では、別の角度から、口コミが多く発生する、そして、情報を手繰り寄せる機会が多くなる商品の性質を考えてみたいと思います。

価格.comや、@コスメ、その他、インターネットの時代からよく使われてきたコミュニティサイトのブランド別や商品カテゴリ別のレビューで頻繁に質疑応答が行われてきた商品にはどのような特徴があるのでしょうか?

ここでは「Consumer Behavior Wells, William D./ Prensky, David」の著書を参考とさせて頂き、3つの製品種類ごとに、口コミやレビューを確認し、必要な情報を手繰り寄せる生活者の動機をひも解いてみたいと思います。

口コミが多く書き込まれ、閲覧される、情報を手繰り寄せたくなる商品の分類について、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

商品例

口コミを頼りたくなる商品の種類の1つ目は「初めて購入する商品」です。これは私の長女が中学の管弦楽部に入部した時、担当する楽器が「ビオラ」になった時に起きた経験からご説明を差し上げられそうです。

自分が担当する楽器を、中学校の管弦楽部からお借りして演奏を続けてきた長女から、「自分のビオラが欲しい」と相談を受けた時のことですが、私も家内もビオラが「幾らくらいするもの」なのか、そもそもで言うと、「どこで売っているのか」という疑問符が付きました。

実は、バイオリンと比べ、ビオラは演奏者が少ないこともあり、似たような形状でありながら、取り扱っている楽器屋さんが極端に少ない、という事実は、ビオラの実物を観に、近くのショッピングセンターに入っている音楽楽器店に出向き、バイオリンしか取り扱いがないと説明を受け、初めて知ることになりました。

当然、周囲にビオラに精通した知人がいるわけではないので、私の場合は、Googelの検索エンジンを使って、まずは、どこの場所にある音楽楽器店にビオラの実物があるのか、試しに弾かせてもらえるのか、種類はどのようなものがあって、価格帯は?という疑問を一つ一つ解消するための情報探索活動に勤しむことになりました。

「購入経験のない買周品」であるビオラの購入を例にとると、口コミを活用する、手繰り寄せるモチベーションは、足を使って探す、音楽楽器店に出向いてアドバイスを得ることにかかる工数を大幅に削減するとともに、理解するまでの時間を短縮することにある、と言えるのではないでしょうか?

口コミにを頼りたくなる商品の2つ目は「技術的に複雑な製品」です。上記の図表では家電を挙げておりますが、最新技術が搭載された電化製品や、スマートフォン、PCなどがわかりやすいのではないでしょうか?

私も、iPhoneの型番が、iPhone4やiPhone5といった時代までは、新規に搭載される機能や便利な使い方について努力して理解に務め、毎年Appleの新商品がリリースされるイベントの記事を拝読しては、新しい製品についてキャッチアップを試みておりましたが、型番に「Plus」や「Pro」といった記号が付与された以降は、完全に置いてけぼりになってしまいました。

スマートフォンに限らず、ノートPCや、白物家電も、技術的に複雑で、使いこなせないほどの機能が搭載されていること。操作も複雑化しており、取扱説明書の分厚さたるや、辞書と見間違うような商品の場合、自分が知りたいことに、ストレートにたどり着くことが難しい、という情報探索における課題感を誰しもがお持ちではないかと思います。

「技術的に複雑な製品」について、口コミを活用する、手繰り寄せるモチベーションは、情報検索や、探索、調査にかかる時間を削減したいということもさることながら、ピンポイントに知りたいことに答えてほしい、ゴールにたどり着けない(探し当てられない)という事態を解消したい、という点にも、認められるのではないでしょうか?

口コミにを頼りたくなる商品の3つ目は「リスクを伴う製品」です。一度、購入、契約、申し込みを行い、意図した結果が生まれなかったときに、取り返しがつかなったり、残念だという感情が生まれやすく、大小問わずですが、購入や契約、申し込みの際に、本当に正しい判断かどうか、決断に迫られ、「迷い」が生じやすい、という特性を持っています。

この製品(便宜的に製品という表現を使います)には、例えば進学や就職といった人生を左右する大きな決断から、将来の不確実性の大きさを覚悟して契約する金融商品といったものに加え、体への影響が心配になる薬や化粧品といったものが例として挙げられます。

例えば、基礎化粧品は、洗顔料(洗顔用化粧品)、化粧水、美容液、乳液、クリームといった皮膚を健やかに保ち肌質自体を整えることを目的としたものですが、非常に口コミが多いことがわかっています。

ファンデーションや口紅といったメイク用の化粧品と比べ、価格帯ももとろん重要だとは思いますが、何よりも、ご利用される方の「肌質」、「タイプ」と基礎化粧品の成分が合致するか、ご自身の肌にあったものを選び取れるか、この点が価格以上に重要だと思います。

一方で、肌にあう基礎化粧品かどうかは、一定期間使ってみないとわからない、という特徴を持つ商品のため、乾燥肌や敏感肌といった、肌のタイプ別と、商品の掛け算で、口コミを確認し、私の肌タイプとあった化粧水かどうか、商品を購入する前に、口コミ情報を入念に確認する人が多いと考えられます。

「リスクを伴う製品」」について、口コミを活用する、手繰り寄せるモチベーションは、一度決断をすると、容易に後戻りが出来ないタイプの製品を選択する際、不確かなことばかりで、先の見えない暗闇を、少しでも明るく照らし、先を見通せるようにしたい、という気持ちの表れ、だと言えるのではないしょうか?

第4章(3)口コミのスイッチが入りやすい商品って何?、では、商品が持つ特徴や性質に着目し、主に口コミを「利用する側」の視点から、デジタルネイティブ世代が口コミを用いて情報を手繰り寄せようとするモチベーションについて読み解きました

第4章(4)人はなぜ口コミ情報を発信するのか、として、口コミを書き込んだり、SNSのネットワークを用いて情報を発信するのか、人間の内面にある意識や、口コミ情報を発する心理的な動機について考えてみたいと思います。

 ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

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