OMOプラットフォーマーの定義
こんにちは。
マーケティング視点で読解力を高めるノートでは8回にわたり、アフターデジタルの社会とOMOについて読み解いたことをおすそ分けします。
【記事化予定】
アフターデジタル社会とOMOを読解するノート
-なんでこのタイミングでQRコード決済-
1.似ているようで異なるO2OとOMO
アフターデジタル社会とOMOを読解しようとすると、非常にわかりやすいのが楽天やLine、ソフトバンクとYahoo!の合弁であるPayPay等、大手事業者を始めとしてあまたの企業が参入した「QRコード決済」だと思います。
なんでこんなたくさんの企業がQRコード決済にお熱なのか、その背景事情を考える前提として、18年度くらいから19年度にかけて言葉としての市民権を得つつある「アフターデジタル」や「OMO」の概念を頭に入れておく必要がありそうです。
アフターデジタルの概念での一般的な説明は以下のようなものでしょうか?私は、オフラインの消費活動や顧客体験をデジタルで再定義すると理解をしています。
(1)O2Oとは
ここ数年来、ECチャネルとオフラインチャネルの両方を持つ企業やメディアと小売りを繋ぐ接点での販促や送客の文脈で語られてきた表現はO2O(Online to Offline/Offline to Online)ですよね。
私が良く見聞きしてきたのは、オン→オフの一方通行のものが多かったですが、一般的なO2Oは以下の図のような概念のものだと思います。
オフラインはオフライン、オンラインはオンラインの事業活動が別々に行われている中で、できることをやろうとすると、「送客」になるのですが、オンオフがお互いに別の事業者だったり、同一事業者でもオンとオフが別の事業部門のタスクになっており、ひとつ筋の通った統合的な取り組みになりづらく、部分的、限定的な取り組みに留まるケースが多いように思います。
(2)OMOとは
一方で、O2Oの進化系というよりは、顧客体験をデジタルで再定義する新たな取り組みとして注目を集めているのが、OMO(Online Merges with Offline)です。
顧客接点における「認証」、「決済」、「お買い物体験」をデジタルで再定義しているため、オフラインとオンラインで起きがちな一方通行、利用者の特定や理解における分断が起きづらいところに特徴があると考えられます。
またOMOを実現するために最も重要なファクターは「ユーザーID」であり問われるのは「IDの量」と「IDの質(有効なIDか否か)」になりそうです。
2.キャッシュレス事業者
国内のキャッシュレス事業者はカオスマップができるほどに増えているわけですが、大きく区分すると、
・クレジットカード
・電子マネー(非接触/NFC)
・QRコード決済(コード決済)
になると思います。
キャッシュレスプレーヤーのロゴマークを眺めていると、参入意図や事業目的、成長のステージも異なる多数の企業が並んでいますが、OMO時代のプラットフォーマーを志向している企業という視点でも別の分類ができそうですので、次のパートでは、OMO時代のプラットフォーマー区分を考えてみたいと思います。
3.OMO時代のプラットフォーマーとその条件
(1)OMOプラットフォーマーの区分
各社の決算発表やアナリスト向けの説明会資料、外部のセミナーやシンポジウム等で発信される事業の構想やビジョンを見聞きし、OMO時代のプラットフォーマーを志向する事業者だと当方が印をつけている企業は以下の企業になります。
(1)大手IT/通信キャリア
(2)流通小売(コンビニ/GMS)
7&iホールディングスとイオンは非接触のプリペイドマネー。Lawsonは自社のPayサービスを行っておらず、ローソンアプリ、ローソンIDで会員管理。ファミリーマートが唯一自社QRコード決済を店頭展開中
(3)グローバルプラットフォーマー
Apple/Googleは既存電子マネー(suicaやiD規格、JCBのQUICPay)と連携する形でユーザー接点を取りに行く方針。
Amazonは唯一QRコード決済のAmazonPayを国内リリースも、アクワイアリング(加盟店開拓)を代理店に委ね、利用可能店舗が非常に少ない状態
(2)OMOプラットフォーマーの条件
キャッシュレスへの参入事業者≒OMOプラットフォーマー
国内キャッシュレスカオスマップに記載の事業者の中には金融領域での事業拡大を目指して参入したスタートアップや既存事業の劣化、棄損を恐れて参入する旧来型の金融機関等が含まれているため、このシリーズで読解する予定のOMOプラットフォーマーとは異なるものとして一線を引く必要があります。
それでは、どのような条件を満たす事業者がOMOプラットフォーマーなのかを定義すると、以下の図表の条件に当てはまる企業だと考えられます。
1点目は、祖業のビジネスで大量IDを保有している事業者です。スタートアップは一から利用者基盤を獲得する必要があるためこの条件から外れます。
例えばLineはSNSコミュニケーションで国内で最も多くの利用者IDを既に確保している他、楽天は祖業のECである楽天市場を通じ、多くの会員を既に有しており、この条件に合致します。また、国内通信キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)もこの条件に合致します。
2点目は、祖業の事業基盤を活用し、次なる成長事業へ進出をする必要性、または必然性があり、模索している事業者であるということです。言い換えると、利用者ID/会員IDの最大化を図りながら、自社プラットフォームの面積を拡大する、あるいは自社経済圏を拡大する目論見があるなかで、その進出を阻む理由が「既存ID」にあり、「有効なID」を再取得する必要に迫られているということです。
有効IDの再取得に至る理由と事情については、
No.4 誰もが目指す一つのゴールAlipayモデル
でご紹介する予定です。
もう一つ、未来に向けてOMOプラットフォーマーとなり得る企業の条件を考えてみます。加盟企業や利用者からの評価と信用を得て、存在感のある事業者となるには、2B、2Cに対し、以下の図表にある2つの条件を提示できる、その要件を備えた事業者である必要があります。
1点目は、OMOプラットフォーマーが提供する事業の顧客接点となる加盟企業、利用拠点に対し、このプラットフォームの採用を促す、巻き込む力を示すという意味で、基礎的な会員基盤を備えている必要があります。
これが数百万人(ID)クラスと数千万クラスとでは、納得感、安心感が数字の倍数以上に異なります。特にオフラインの事業者からすると、自社自店の利用者となる会員基盤のスケールは採否を決める、最も大きな評価項目になるでしょう。
2点目は、優れた顧客体験と利用の合理性を備えたサービスを提供することが挙げられます。特に入り口がキャッシュレスだと考えた場合、日本においては、「敵は本能寺(現金)にあり」といって過言ではなく、
「必然性」「利便性」「省力/省思考」「心理的な壁」「経済合理性(おトク)」といった、幾つもの条件を備えたサービスを、トラブルなく提供することで、オフラインの生活になくてはならない(利用習慣化した)サービス提供事業者として信頼を勝ち得ることができるようになると想定できます。
No.1 OMOプラットフォーマーの定義については以上で終了です。次回は
No.2 日本におけるキャッシュレス決済の見通し
として、QRコード決済が日本市場でどれくらいの存在感を示すことができそうか、2025年のキャッシュレス市場の見通しを読解したいと思います。
ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。
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