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「在りし日、学舎」振り返り

「在りし日、学舎」を書いた経緯については事前にSNSで観劇予定の方へお出ししたお知らせや(下記)当日パンプレット、販売用脚本のあとがきなどで書いているのでここでは別なお話をしたいと思います。

ご観劇予定の皆様へお出ししたお知らせ

「在りし日、学舎」は未来の戦争を題材にしています。未来と言ってもロボットが戦ったり、ドローン戦争のようなSFではなく、本当に数年後に起きたとしたら、というような戦争です。
ただある程度勉強したとはいえ、戦争有識者が見たら有り得ない戦争描写と言われてしまうでしょう。
2年続いてる戦争が日本という国をどのように荒廃させていくのかの想像は確かに足りなかったかもしれません。

しかしこの作品において最も描きたかったのは「今の価値観を持った状態で、戦争状態になったとき、我々は何を考えるか」でした。

キャストたちと練習を兼ねて、ディスカッションを行ったこともありました。しかしそれは真剣がゆえに彼らが考えているだけになってしまいました。見ている側にとって他人事になってしまうのです。
どうやってお客さんを議論に巻き込むか。ここが大事でした。
また、not to be(戦争に行かないエンドを迎える作品)で、稽古中にどうしても青春劇になってしまうのは避けたいと伝えていました。これも見ているお客さんが良かったねと他人事になってしまう恐れがあったからです。

お客さんに向けて問う、発するという表現方法もあるのですが、そうしてしまうと質問を投げかける側になってしまい、それも違う。
あくまで同じ立場で同じように考えてもらいたかったのです。役者の絶妙なセリフの扱いで、ディスカッションを一緒に考えてもらいやすく出来たのではと思っています。

今回結末が「戦争に行く」と「戦争に行かない」の2パターンがありました。恐らく僕は戦争に行かないと言えないと思っています。嫌だと思いつつ、戦地に向かっていると思います。せめてそれまでの間に色々な事を考えようとはしたと思います。しかし行かないと意思表示が出来ないと思っています。
しかし、それを否定したいと思いました。
自分への否定。行かない為に何が出来るか。
not to beは僕にとって価値観の否定の物語でした。

一人では行動が起こせないから、みんなに巻き込まれて。そして戦争に行かないと主張したいはずなのに、誰かのためにという言葉を否定出来なくて、そして流されてしまう布施は、僕や、同じように自分の意思を強く出せない誰かなのだろうと思います。

一人でも行動を起こせる姜を救うことが出来たエンドでは、そこから仲間を増やしていき、みんなで戦争に行かないという未来を勝ち取ろうと動きます。

大人になってしまうと、自分の役割が見えて来てしまいます。本当はやりたくないことでも、自分がやらなきゃいけないのだよなと思ってしまいます。
だからまだ自由に未来を選択出来るであろう子供たちを護りたいって気持ちがありまして、美祢先生というキャラクターが生まれました。
美祢先生は生徒たちを叱りながらも、彼らが自発的に考えるために背中を押します。
ただ、それを出来るのも強さで、僕にはそんな強さがなく、下松先生のように「本当にいい先生だこと。」と嫌味を言うしかできません。誰かのために行動を起こせる人を、本当に尊敬します。

not to beは未来を選択する話。
to beは未来を諦めて受け入れてしまう話。

僕はto beが書きたくてこの話を書き始めました。
絶望が好きというわけではないのですが、綺麗事が苦手で、ちゃんとキツいことから目を逸らさないで壁を確認したい派でして。やっぱりこうなっちゃったらキツいよなーとディストピアになる前に書いておきたくて。
でもやっぱりその諦めちゃう自分を何とかぶっ倒したくて、仲間を集めて抗ってみようと思ってnot to beが生まれました。

to beの方がむき出しでぶつかり合っていて、気持ちがいいので好きです。
not to beはみんな大人になっちゃってて、かわいくない笑。
でも千秋楽はnot to beを選びました。
やはり奇跡を信じちゃうわけです。生きてる限り、もしかしたらって思いたいですしね。
あ、でもto beが好きなんです。奇跡なんていつも起きるわけじゃないですから。to beだよね、やっぱり。と思いつつ、もしかしたら、って思ってるだけなんで。
ええ。
すんごいやっぱりって言ってる。何回やっぱり言うの。

あ、最後に役者たちを褒めてもいいですか。
みんな空間把握能力高すぎです!
17人もキャストいるのにみんな立ち位置が良い!
立ち位置きれいでしたよね!
言葉を生み出す能力が高い。
セリフって用意された言葉じゃないですか。でもちゃんとその場で考えて生まれた言葉のようになっていました。
感情がすごい。
to beが特にそうなんですが、感情のジェットコースターを見事乗りこなしていました。
後夜祭の宴会のシーンからのお通夜のような授業の朝。本当すごかったです。

とても良い公演でした。
本当にありがとうございました。
皆様からのダブルコールと、小劇場で珍しいスタンディングオベーションが見れたこと、本当に嬉しかったです。いい歳した大人がぴょんぴょん跳ねて「やったーやったー」とか言ってしまいました。
今後もこの公演の事は忘れません。ありがとう。

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