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1本のボールペン

「当たり前」のことに気付けるのは当たり前じゃない。
とても難しいことです。
当たり前のありがたみにはなかなか気付けるものじゃないし、
日頃から感謝できるものでもないと思います。

これを実感する出来事を最近経験しました。


ボールペン事件


愛用していた4色ボールペンを紛失したのです。
名前が彫ってあって、
インクがなくなったら替えインクを補充して使い、
いつ何時でもそのボールペンを使っていました。
一軍どころではなく、
そのボールペンだけが私にとってのすべてだったのです。

このボールペンへの愛伝わりましたか?

この子をなくしたのです。

我が子が去ったのです。


今、
「たかがボールペン1本」ごときで」
と思われた方いませんか?


でも、
私にとってそれはとてつもなくショックな出来事でした。
その日から一週間病み期突入です。
書く作業全般はその子とともに乗り越えてきていたので、
すべてのことへのやる気が喪失
モチベダウン
絶望状態でした。

記憶をたどり
最後に使ったと思われる教室を探してもないし、
研究室、家、車など
考えられるあらゆる場所を探したのに
出てきてくれませんでした。

自分一人では抱えきれない
あまりにも大きいショックゆえに、
友人に相談したり、
落ちているのを見てないか聞いたりしてみました。

しかし先述したように、
この出来事は他人からすれば
「たかがボールペン1本で」
というほどのことでしょう。

それにもかかわらず、
私が相談したり聞いたりした相手には
そんなことを言う人や、
軽い対応をする人はいませんでした。

それどころか私の周りには、
一緒に学校中を探し回ったり、
用事はないのに
わざわざ学校に寄って探してくれたりする人で
溢れていました。

「あれからあった?」
など気にかけてくれたり、
「他人じゃないあゆみちゃんのボールペンだから大事なのよ」
というあたたかい言葉をかけてくれたり。

「たかがボールペン1本」でそんなに落ち込むな」
などと軽くあしらう人は一人もいませんでした。

(ここだけの話、
 学校以外の場所を探してもなくて、
 「もう学校しかないやん」
 と思って学校に行った日。
 同じ研究室の同級生がゼミ中、
 我が子と瓜二つの子を使っていました。
 ゼミには一切集中できず
「あんな優しい子がそんなことするはずがない」
 と思いながら
 一瞬でも疑ってしまった自分がいたことには
 深く反省しております。
 この友人は
 のちに一緒に学校中を探し回ってくれた子となります。
 本当にごめんなさい。)

この時、
これって当たり前じゃないよな、
と思いました。


ボールペンがなくなり、
このような感情になるまでは
気付くことができなかったであろう、
「今自分が身を置いている輪のあたたかさ」
は当たり前じゃないのだと。


ごはんを毎日食べることができていることのありがたみや、
電気、ガス、水道、すべてのライフラインが
滞ることなく使えていることへの感謝など、
金銭的、物理的な豊かさについては
皆さんも今までよく言われてきたと思います。

さらに、
そこに自分に関わってくれている人という、
コミュニティの豊かさまで考えてみてください。


あなたの周りには、
あなたの人間性に共感した人が自然と集まっています。


言い換えれば、
あなたが変われば、
あなたに集まってくる人も変わる。


自分が身を置く環境を変えれば、
自分を変えることができる。

良い方向にも悪い方向にも。

自分が一緒にいて心地よい人たちと過ごせば
心が豊かになっていくし、
心地よいと思える人が周りにいるということは、
その人たちを惹きつける素敵な魅力が
あなたにはあるということです。


我が子の旅立ちが
「いつもあなたのまわりにいる人たちは当たり前じゃないこと」
「あなたを取り巻く人間の輪のありがたみ」
を再発見するきっかけとなりますように。


Written by Ayumi Kawai

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