「火花」 / 又吉直樹

平凡な芸人の徳永(主人公)とお笑いに命を懸ける神谷の友情と成長の物語。

物語序盤、主人公が20代そこそこの若者のわりには話している内容が知的過ぎるきらいがある。終盤は若干強引に物語が展開し終わってしまう感を読者に与える。しかし、全体として繊細な心理描写は見事。物語が進むにつれて主人公の心の揺らぎを丁寧に丁寧に表現している。著者のテレビでのイメージどおり、物事への深い洞察と知性を感じる文章だ。

時が経ち、季節が移ろう。世間と折り合いをつけて生きていく徳永と何も変わらない神谷。どちらも不器用でとても人間くさい。お笑い芸人という一般的には特殊な職業の人間の物語ではあるが、普遍的な感情が描かれており、読者は必ず共感してしまう部分があるだろう。物語に引き込まれてしまいあっという間に読み終わってしまった。

先日2作目の小説が発表されたようで恋愛小説とのことだ。買って読むことを決めた。