見出し画像

高校受験にむけて小学生の親として考えておくべきこと


今春の大学受験では都立や県立など公立高校の健闘が話題です。

「部活や行事が中止になって勉強時間が増えたからでは」
「地方の優秀な生徒が都会に出るのを敬遠したのでは」

いろんな分析がありますが、それは Twitter で盛り上がってもらうとして、ここでは(主に東京の)高校受験を考えるうえでのポイントをまとめていきたいと思います。

小学校時代の塾は必要か?

近年の都立高校の人気の高まりにより、「小学校高学年から受験塾に通わないといけない」という話をあちこちで耳にします。

でも、これ、本当でしょうか?

わが家では高校生の長男と、この春中学生になる次男、ふたりが高校受験コースを選択するにあたり、3つほど受験塾を比較検討しました。いずれも小学生向けのコースが用意されています。

しかし、詳しく話を聞くと、どの塾もレベル別にクラスを分けるほどの規模ではありませんでした。つまり、1学年1クラスに収まる程度の生徒数しかいないということです。

高校受験最大手塾の大規模校舎ならたくさんクラスがあるのかもしれません。でも、みんながみんなそこに結集しているとは考えにくいですよね。結局、その程度の規模感なのだと思います。少なくとも、小学生のうちは。


高校受験塾の小学生向けクラスで学んでいること

高校受験塾の小学生向けクラスではどんなことを習っているのでしょう。

SAPIX中学部のホームページに2019年度版のカリキュラムが載っていました。参考までに算数のカリキュラムを見てみます。

FireShot Capture 003 - 2019年度 学年別カリキュラム(小学5・6年生) — SAPIX中学部 公式サイト - www.sapix.co.jp

気になる方は拡大して見てもらえばわかるかと思いますが、どの単元も基本的には学校で習うことの延長線上です。中学受験のように塾に行かなければ身につけられない特殊な解法はほぼないと言っても過言ではありません。

比と割合を使った考え方、相似と面積比のあたりは、小学校算数のなかでもつまずきポイントになりやすく、かつ、中学数学でも重要となる部分なので手厚くやってもらえそうです。

それを考えても、家庭学習で十分身に着けられる範囲なのではないかと個人的には思います。


学校の授業と宿題だけで大丈夫なのか

では、小学校時代は学校の授業と宿題だけで大丈夫なのでしょうか?
答えは「設定する目標の高さ」「現在の状況」による、です。

高校受験では、なにがなんでもトップレベルの筑駒開成を目指したい。そのように極めて高い目標を掲げる場合は、小学校時代からの通塾も視野に入れたほうがいいかもしれません。

実際、受験塾で配られる合格体験記などを読むと、このクラスを目指す生徒は中学受験で思ったような結果が残せず、高校受験でリベンジを狙う子が少なくないです。

彼らと互角に渡り合っていくには、ある程度強度のある学習経験があることがプラスに働くのは間違いありません。

しかし、その他の国立附属や都立の難関校(進学指導重点校)であれば、中学に入ってからの通塾で十分間に合うと個人的には思います。もちろん個人の適性や準備の度合いによりますが。


そしてもう一点、現在の状況に関してですが、小学校内容の知識技能の定着に不安があり、なおかつ、家庭で弱点補強をする余力がない場合、外部の力を借りるのは現実的な選択肢になるかと思います。

この場合、選ぶべきは、カリキュラムのしっかりした大手塾というより、問題に向かう姿勢を細かく観察し、粘り強く弱点の発見し補強することをウリにするような小規模の塾や個人指導の先生のほうが向いていると思います。


家庭学習でやるべきこと

小学生時代を家庭学習中心に進めるとして、どのようなことをやっておけばよいのでしょうか。ここでは国数英を科目別に見ていきたいと思います。

理社に関しては、どの高校を目標にするかで必要となる力が全然違いますので割愛します。

▼ 国語

〔 漢字 〕
少なくとも小学校範囲はバッチリな状態に。余力があれば中学高校で習う漢字もどんどん学習を進めたらいいと思います。「まだ習ってない漢字を使ったら ✕ 」みたいな理不尽なことは中学校に入ったら言われないはずです。

教材は漢字検定のテキストや問題集が良いです。漢検をずっと受け続けると学習の進捗が可視化されてモチベーションを維持しやすいです。高校受験では検定によって加点がある高校もあります。中学生になると部活もはじまり、漢検と試合・発表の日程がかぶったりしてなかなか受験できなかったりするので、その意味でも早めに準備することをお勧めします。
〔 読解 〕
たくさんテキストを読むことが一番だと思います。しかし、ただ本を読めばいいというわけでもありません。好きなように本を読んでいるだけだと読むジャンルに偏りが生じ、語彙も増えませんし。読む力もつきません。新聞やジュニア新書など、できるだけ多様なテキストに触れることができたら言うことなしです。

また、小学校の授業だけでは論理面の学習が弱いように思います。論理国語の問題集を小1レベルからバーッとやっていくのも悪くないと思います。案外、中学年~高学年の範囲にピンと来ていないポイントが潜んでいるものです。ここをしっかりやっておくと国語の読解の力がつくだけでなく、英文法古文を学ぶときの視座も獲得できると感じています。


▼ 算数

小学校範囲の学習に不安がある場合は、とにかく穴をふさぐのが先決です。穴は思った以上に手前にあったりします。低学年からの標準的な市販ワークをガーッとひとさらいして、手が止まるところや理解が甘いところがあったらよく復習する。市販のワークの前に教科書の巻末問題をやってもいいと思います。基本的な問題をバカにしてはダメ、絶対。の精神で。

こちらの学ぼう算数シリーズはワークに対応するテキストもあるので家庭学習に向いています ☟
欲を言えば、その先、いわゆる "一行題" とよばれる問題をランダムに配置した下剋上算数の基礎編でもやるといいと思いますが、ここまでになると中学受験算数に片足つっこんだ状態なので負荷は高いかもしれません。

とにもかくにも、小学校算数最大の壁と言われる「割合」については十分な理解が必要です。ここがゆるゆるだと中1最初のほうにある単元「文字と式」でいきなりコケる可能性が高まります。


▼ 英語

2021年度から中学校でも新学習指導要領でのカリキュラムがはじまります。そのなかで一番インパクトが大きいのが英語だと言われています。これまではアルファベットの書き方からゆっくりはじめていたものが、かなりのスピードで進むペースに変更されます。Twitter などでは少なくない学習塾関係者が「これはヤバい…(中1最初からついていけない生徒が多数出る)」と感想をもらしているほどです。心してかかりましょう。

…といっても、特別難しいことをする必要はないと思っています。自学で進められるくらいの薄くて簡単な問題集を買って、どんなことを学ぶのかの見取り図をまず頭に入れるとともに、NHKの基礎英語を毎日聞くといいと思います。

ひとりで進めるのが難しい場合は、最初は一緒にやるのもいいかもしれませんね。問題集1単元と基礎英語で30分/日くらいでしょうか。面倒は面倒ですが、中学生としての学びの立ち上がりを支援することの見返りは後から何倍にもなって返ってくると信じています。


いつから塾に入るべきか

もしここまでのことを小学生がひとりで完遂することができたなら、そのお子さんの学ぶ力はすでに中学生として十分やっていけるものであり、塾に入るのも中3の受験学年からで大丈夫かもしれません。

しかし、多くの小学生は自律的にここまでできませんし、なにより自分の弱点を自分で発見すること自体、かなり高度な学習スキルです。

そうした標準的なお子さんがどのタイミングで塾に入るべきなのか。これは家庭の経済状況や価値観や他のやりたいこと(部活動など)が複雑に絡み合うので一概には言えません。

ただ個人的には、中1の最初からが無難だろうとは思います。

中学校の授業の進度に合わせて自学で受験勉強に取り組んでいると、入試に必要となる演習に十分に時間をかけられないまま受験を迎えることになってしまいます。

大手塾であれば早ければ中2の終わりまで、遅くとも中3の夏休み前後にはすべての学習範囲を学び終え、入試に向けた演習問題をやり込む段階に入ります。そんな生徒たちと徒手空拳、ガチでやり合うのは正直言って無謀です。

中1の最初、それも中学校生活が立ち上がる前の3月からがベストだと考えます。これは結果的に塾サイドの思惑通りとなってしまうのですが、彼らの言い分にも理があります。

学校がはじまってしまうと部活動を含めた学校のルーティンや友達関係が先に生活の中に入り込んでしまい、その生活基盤に合わせるかたちで学習サイクルが組み込まれることになります。

それでもいいっちゃいいのですが、新生活がはじまる手前で学習サイクルだけ立ち上げておき、そのサイクルがまわるように新生活をアジャストしていくほうが調整の負荷が軽いと思います。

1週間ごと、1ヶ月ごとに学ぶべき内容がある。そこに学校の宿題やテスト勉強、部活動、趣味や、友達との遊びを組み合わせて、すべてがうまくまわるように組み立てる。途中途中でうまく進捗しているかをチェック・モニタリングし、問題や遅滞があれば目標達成にむけて改善策を考え実行する。

この自己調整型の学習こそ、中学生として身に着けるべきスキルであり、自己決定権をもち主体的に学びを進める一人前の学習者になるための大きなポイントだと考えます。

いつもうまくいくとは限りませんし、むしろ最初のうちは失敗もすると思います。それでも親がコントロールを強めるのではなく、コーチやメンターのような向き合い方で本人にとってのベストを探っていく。それを可能にするためにも、受験学年ギリギリになってから塾に入れて大きな生活変化を与えるのではなく、新生活手前からのゆるやかな助走期間、失敗できるゆとりがあったほうが大事故にはならないのではないかと思います。



中学時代は大変化の時期。

大変なこともある一方で、こころやからだの大きな変化(=成長)を見届けられるのは親の醍醐味でもあります。

受験など、気になる未来もたくさんありますが、楽しんでやっていきましょうね!

-----

\\ Twitter やってます //

Twitterでも日常生活のや教育関連の最新ニュースを追いかけてつぶやいています。ご興味があればぜひフォローよろしくお願いします。
Twitter: @knockout_


この記事がお気に召しましたら、ぜひ応援(サポート)をお願いします。サポート完了後に現れるポップアップの「オススメ」ボタンを押すと、フォロワーのタイムラインにもこの記事を表示させることができます。

スキ♡ボタンもぜひに! スキはnote非会員でも押すことができますよ。

フォローやSNSでのシェアも大歓迎です!

サポートをしてくれると徳を積めます。たくさん徳を積むと、来世にいいことがあるともっぱらのウワサです!