10分のフィクション-1

しまった、もう散りはじめている。

重たい冬のコートを脱いで、軽くなった体でスキップしたくなるような季節。

だけどどうしたって心がふらふらしてしまう。

春の思い出じゃないのに、もうずっと遠くの人たちが思い出される。

元気でいるだろうか、もう知るすべもないけれど。

トウキョウにはいろんな人がいて、いろんな思いが交差する。散り始めの目黒川にごったがえす人たちは、桜に何を求めているのだろう。

もう来ない人を待つように、毎年観にきてしまう。

私も日本人ということにしておこう。


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