愛しのブス

後悔の日々というのは深く刻まれるものだ。
そして癒されることが無い。
愛しのブスになれなかった私は、一方通行のLINEを辞めようと思った。
「忙しくて死んでない限りは返事します」
そう言ってくれた彼は、それをもうとっくの昔に忘れているに違いない。
もう何回一方通行の言葉を送ったのか。

私が出会った時は彼には彼女がいた。
いつ別れたのかは知らないが、失踪に近い彼女の答えに深く傷ついた彼は「女性不信ですから」と言っていた。
彼の口から彼女が居たことも、失踪されたことも聞かされてはいないが、世間は狭い、恋愛戦闘中の女は情報戦をするものだ。

私はいつ会える?とも、私の事好き?とも聞いたことは無い。
聞いたことは無いのだ、ただ伝えてきただけで、いつの間にか拒否されるようになっただけで、そして2回振られただけで、でもまだ繋がっていただけなのだ。

既読無理は辛いと伝えた。
それを既読無視されて彼はTwitterに焼肉に来ているとツイートした。
そのテーブルの向こう側には誰かがいた。
誰がいたのだろう。
愛しのブスだろうか。

彼はサイコパスで自分勝手で自分に厳しく自分を粗末にしては自分を鍛えて他人には真実を話さず、さすが射手座の金星人B型だと思ったものだ。
そこに惚れ堕ちクリープハイプのような歌を好み聴き、あいみょんのライブってバックバンドありなの?メジャーデビュー前のライブは弾き語りだったの?と意味の分からない所に拘るようになった。
彼の好きなピンク・フロイドとQUEENをApple Musicで聴き漁り、彼と共通の話題を作ろうとする浅はかさ。
それでも私は彼に話しかけられず、「バイバイ」だけを伝える日々だった。
LINEでは伝えるだけ。
現実ではバイバイだけ。

愛しのブスになりたかった。
未来のないクズの結婚なんてしない恋人になりたかった。
311で、ずっと帰っていなかった実家が流された彼の人生の休息場所になりたかった。
驕りに違いなかった。

私ではない愛しのブスと地獄に落ちればいい。
LINEの最後は、「すみません、少し黙ります」

さよなら、初恋みたいに戸惑う程好きだった人。


#エッセイ #恋愛 #失恋 #繋がり #愛しのブス

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