見出し画像

企業のサステナビリティ経営とインパクト〜Ben &Jerry'sの事例から〜

脱炭素のテーマは、企業のサステナビリティ経営の中でも、近年特に重要視されています。その取り組みにおいて「インパクト」の考え方が採り入れられている例として、Ben &Jerry's(ベン&ジェリーズ)の事例をご紹介しましょう。


「脱炭素」のユニークな視点:牛のげっぷ


米国のアイスクリームブランド、Ben &Jerry'sは、創業時から「アイスクリームを通じて社会をより良くする」理念を掲げ、原材料調達におけるフェアトレードや持続的な酪農経営支援、財団の設立などを手がけてきています。

脱炭素の取り組みにおいては、
1)同社の設備における再生エネルギー使用率100%を2025年までに達成
2)炭素排出を2025年までに40%、2050年までに50%削減(2015年時起算)
という目標を掲げています。
その上で、排出する炭素の半分以上を占める乳製品の製造プロセスに焦点を当てて、下記の活動を行っています。

  • 炭素排出要因のひとつである「牛のげっぷ」減少のため、の飼料の変更

  • 牛糞から発生する炭素を削減するための肥料消化器等の活用

  • 飼料生産の農法変更

さらに、乳製品の使用自体を見直し、乳製品を使わないアイスクリームやクッキーの製造、炭素排出量がより少ない原料活用等を始めています。

<引用>
https://www.benjerry.com/whats-new/2022/05/mootopia
https://www.benjerry.com/values/issues-we-care-about/our-climate-impact

インパクト最大化の視点

1. 「意図」をもった科学的なアプローチ

Ben &Jerry'sは、上述の取り組みを始めるまでに、国内外の酪農家、科学者、学者、調査機関等、様々な関係者との綿密な検討を重ねました。
その結果、牛の「げっぷ」や牛糞など、製造プロセスの中で、商品とは一見関わりがないかのように見える部分に着目して、炭素排出の根源に効果的に対処する方法を編み出しています。
その方法の「仮説検証」を行う形で限定的に実践を始め、仮説が検証された際に取組みを拡大していくという科学的なアプローチを取っています。

2. 積極的な発信

「仮説」が検証されるという想定のもと、「パイロット実施」「仮説検証」の段階にある活動を積極的に発信していることも、同社の取り組みの特徴のひとつと言えるでしょう。
そうすることで同社の活動の認知が高まり、同様の取り組みを行うことへの関心が広がることを期待していると考えられます。

3. 「波及効果」を見据えた一手の具体化

インパクトを創出するためには、行った活動から「波及効果」が生まれることが大切です。期間や範囲が定まっている活動が終了した後、その活動がどのような広がりを通じて波及効果を生むことを目指すのか、そのために活動終了までにどのような「仕かけ」を作っておくのか、活動開始時に考えておく必要があります。
Ben &Jerry'sは、上述の取り組みを「パイロット実施」として、国内外の15の農家が参加する形で開始していますが、成果確認・成功モデルの確立の後にはこれを拡大し、産業全体に拡散していくことを想定しています。

まとめ

サステナビリティ文脈で具体的に何をやるか考える際、簡単に手がつけられることや、お金で解決できることで達成できる水準と、掲げている高い目標水準との乖離に立ちすくんでしまうことがあるかもしれません。環境的・社会的な目標を達成するためには、インパクトの考え方が役に立ちます。そして、実際にインパクトの考え方を取り入れて、個性あふれる取り組みをする企業が出始めています。

本日ご紹介したBen &Jerry'sは、一見冗談のようなテーマを扱いつつも、インパクトの考え方のポイントを押さえた、科学的で戦略的なアプローチをとっています。
日本の企業がサステナビリティの具体的な施策を考える際のご参考になれば幸いです。

筆者のTwitterでは、インパクトに関する企業の取り組みを紹介していますので、よろしければご覧ください。

本記事、及び当社にご関心ある方はこちらからお問い合わせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?