夢追い人を理解できなかった話
「友達がベースやってて」
恋人の言葉に、あ、と引っかかりを覚えた。
ベースという単語は、嫌でも前の恋人を思い出させる。
別に良いんだ。目標に向かうことは素晴らしいことじゃないか。でも私の「別に良いんだ」は、全然良くないんだ。
その友達は、大きなバンドで演奏しているし、Mステにも出たことがあるんだって。歳は20代後半。
だから私は、(ほら、叶えてる人はもうとっくに叶えられてるんだよ。)って、どろどろの真っ黒い感情で、かつての恋人を批判した。
「その友達は音楽一本でやってるの?」
「そうだね」
「へぇ。音楽で成功する人って、ほんとにすごいよね。」
本気で何かを叶えたい人がいて、それを「夢追い人」と片付ける人がいる。
どう頑張っても、私は後者だった。
パートナーだからこそ1番の理解者でいたいと思う。だから、夜遅くまでスタジオ練習に行く彼を1人で待った。彼がベースと向き合っている間「私も何か有意義なことをしなきゃ」と本を読んだ。だけど、言わなかっただけで、ずっと寂しかった。
私はあの彼にどうして欲しかったんだろう。
1番大切な夢を諦めて、私のことを大切にして欲しかった?かけた時間に見合った成功をして欲しかった?どれもピンとこない。
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