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アジャイルファイナンスについて考える


こんにちは。ナレッジラボCEOの国見です。

近頃、アジャイルファイナンスという言葉に触れることが徐々に増えてきたので、今回はアジャイルファイナンスについてさわりをまとめてみたいと思います。

アジャイルといえば、ソフトウェア開発の考え方としてよく知られていて、ナレッジラボが開発しているManageboardも当社プロダクトチームがアジャイルの手法であるスクラム開発をしているので、結構馴染みのある言葉ではありました。

一方で、アジャイルファイナンスとなればあまり聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか?

ファイナンスをアジャイルするってどういうこと?ということでいろいろ調べたことをまとめてみたいと思います。

そもそもアジャイルって何?

アジャイルはナレッジラボでも取り入れている開発手法なのですが、よくよく考えてみると、アジャイルって何?と聞かれてもうまく説明できなかったので、そもそものアジャイルについて改めて考えてみたいと思います。

まずソフトウェア開発におけるアジャイルというのは、アジャイルマニフェストの一連の原則を説明する考え方と哲学で、2001年の「アジャイルソフトウェア開発宣言」において、4つの価値と12の原則として定義されたものから始まったと言われています。

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引用:アジャイルソフトウェア開発宣言

アジャイルソフトウェア開発の4つの原則というのは

プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、

というものです。

これらの4つの原則を守りながら、アジャイル開発が大事にするマインドセットとして重視すべき「アジャイル宣言の背後にある原則」が興味深い内容となっています。詳細は原文をみていただくとして、いくつかご紹介すると、

・顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供します。
・要求の変更はたとえ開発の後期であっても歓迎します。変化を味方につけることによって、お客様の競争力を引き上げます。
・動くソフトウェアを、2-3週間から2-3ヶ月というできるだけ短い時間間隔でリリースします。
・ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません。
・動くソフトウェアこそが進捗の最も重要な尺度です。
・シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質です。

このようなことが書かれています。

これらからもわかるように、アジャイル開発はユーザーのニーズ変化が激しかったり、不確実性が高い環境下でユーザーに価値のあるソフトウェアを提供するためのソフトウェア開発の考え方だと理解しています。

ソフトウェア開発と経営の共通点

アジャイルソフトウェア開発宣言を読んでいて、思ったことがあります。

「これってソフトウェア開発について書いているけど、そのまんま経営に当てはまるんじゃないの?」

ということです。

2010年代に入ってテクノロジーの進歩は急速であり数年後ですら予測はすごく難しくなっていて、世界のあらゆるマーケットは不確実性や不透明性がどんどん増していっている、いわゆるVUCA(ブーカ)の時代になっています。
VUCAとは、
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
の頭字語であり、一言で表現すると、予測することがすごく難しく不確実性が高い時代であるということです。

VUCAの時代にユーザーのニーズを捉えた柔軟なプロダクトを開発するための考え方がアジャイルであるならば、VUCAという先行きが見通しにくく、かつ変化の激しい経営環境を乗り切るためのファイナンスや経営管理のあり方も同じなのではないでしょうか。

このような流れをファイナンスの先進国であるアメリカを中心に先取りしながらこれからの時代を乗り切るためにファイナンス・経営管理をアップデートしなければならないというのがアジャイルファイナンスの基本的な考え方です。

ソフトウェア開発の世界では、SaaS開発など変化の激しさや不確実性の高いサービス開発で多くの成功事例や成果が出ているアジャイルの考え方を経営やファイナンスに適用してみるというのは、私たちのミッションやサービス思想ともピッタリあったとても興味深い考え方です。

改めてアジャイルソフトウェア開発の4原則を経営管理や財務目線で解釈してみると、こんな感じになりました。

プロセスやツールよりも個人と対話を、

→スプレッドシートで複雑な財務モデルを作るよりも、組織メンバー間の対話を促す仕組みを

包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、

→スプレッドシートやレポートを作りこむよりも、事業を伸ばす意味のあるアクションにつながる仕組みを

契約交渉よりも顧客との協調を、

→部門間の予算の取り合いよりも、各部門が協調できる仕組みを

計画に従うことよりも変化への対応を、

→期初に作った硬直化した計画よりも、経営環境や組織の変化に対応したフォーキャストの仕組みを

こんな感じでアジャイルソフトウェア開発の4原則を経営・ファイナンス的に解釈しても結構座りはいいと思われます。

アジャイルファイナンスの基本的な考え方

アジャイルファイナンスについては、米国公認会計士協会(AICPA)とオラクルがまとめてくれている以下のレポートがすごく勉強になります。

このレポートでは、アジャイルファイナンスのリーダーは以下のような特徴を持つとされています。

・ファイナンスの近代化を加速するクラウドテクノロジーの活用
・ビジネスサービス、シェアードサービス、センターオブエクセレンスを統合したファイナンス組織
・ビジネスの意思決定者をサポートする部門の枠を超えた財務チーム
・顧客や利害関係者の価値を創造するための非財務KPIのマネジメント 

以前は、財務チームは財務の専門性を高め、財務に閉じた業務領域でも問題は顕在化していませんでしたが、不確実性が高く変化の激しい時代となった今、アジャイルな経営管理していかないとマーケットやユーザーの変化に対応できず事業の継続すら難しくなっています。

従来型の財務チームの問題としてよく言われているのが、「サイロ化」です。サイロ化とは、企業のある部門が他の部門と情報共有や連携などをせずに各自がそれぞれ独自判断で業務を遂行することによって、仮に連携していたら見えていたら解決や対応ができた問題に機動的に対応できなくなる問題です。

アジャイルファイナンスでの一つの重要なポイントが、財務部門が財務領域に閉じず、事業部門のKPIまで含めた非財務領域としっかり連携しながら、事業をドライブさせるマネジメントをしていくことにあります。

そのためにクリアすべきは、組織構造の問題とテクノロジーの活用です。

財務部門と事業部門がそれぞれ別のスプレッドシートを使って財務データと非財務データを管理している従来型のマネジメントではサイロ化の問題を解決することがすごく難しくなります。

アジャイルファイナンスを実施するためには、アジャイルファイナンスリーダーの特徴の1点目にもあったクラウドテクノロジーをフル活用することでテクノロジーを活用しながら従来型スプレッドシート管理から財務管理をアップデートすることが必要となります。

ナレッジラボとしても、日本の企業がアジャイルファイナンスを実現できるためのクラウドテクノロジー基盤とオペレーションノウハウを提供し、特に中堅・中小企業でもアジャイルファイナンスを実現していただけるようなUI/UXの高いサービス開発を進めていくことで、日本企業の財務管理のアップデートに貢献したいと考えています。

アジャイルファイナンスについては、今回他にも調べてわかったことがたくさんありましたので、また別の記事でご紹介していきたいと思います。




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