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空を飛ぶ 米を炊く 夢を見る

「自由に空を飛びたい」という夢に挑み続けたカメリア・ファルコがドリームフライヤーを造ったように、「楽して米を食べたい」という人々の夢の結実がドリームライスクッカー a.k.a. 炊飯器である。
この偉大なる発明は「はじめチョロチョロ中パッパ」を面白死語に変え、赤子が安心して泣ける世の中をつくった。ただ人間の欲は計り知れないもので、今度は「米を研ぐのだるくないですか」と声をあげる者が現れる。人々はまた知恵を絞りに絞って、これに無洗米という手法を見出すことに成功する。この発想をもって大いなる手間をまたしても蹴散らした。
結局何が言いたいのかと言うと、炊飯器の中に入っているのは炊き立ての米だけではなく「楽して米を食べたい」という飽くなき人間の欲望と叡智が詰まっているということだ。夢はまた次の夢を生むのである。

最近、炊飯器でチャーハンを作った。それは私が「楽してチャーハンを食べたい」と思ったからだ。炒めるわけではないので、正確にはチャーハン然とした何かである。ネットで見たレシピには「炊き上がる五分前になったら中に卵を流し入れ、再び蓋を閉める」とある。私は驚愕する。炊き上がる前に蓋を開けるとは。そんなことが許されて良いのか。炊き上がりの前に炊飯器の蓋を開ける行為は、完全に禁忌である。少なくとも私の生きる世界線ではそうだった。まだ着替え終わっていない人の試着室を開けるようでもあり、試験開始前に問題用紙の中身を覗き見るようでもある。
恐る恐る炊飯器の蓋を開けるボタンを押す。中にある全ての米が「まだ五分あるだろう」という顔をしてこちらを見上げていた。「全米が震撼した」という表現はこういう時に用いるのが適切かもしれない。溶いた卵を急いで流し入れて、何だか謝りたい気持ちで蓋を閉める。立ち昇る湯気からはごま油の良い香りがした。
結果から言うと、とても良かった。美味しかった。チャーハン風炊き込みご飯のような仕上がり。倒錯した想いは食欲の前になす術なく消え去る。人類の叡智をもって手軽に美味しく米を、チャーハンを食べられることに感謝する。
ただそのように感じていたのも束の間であった。翌日の夕飯時、米を炊く前にふと思う。「炊けるまでの時間だるくないですか」と。そうなってからの行動は早い。気が付くと私はこれまた人々の夢の結実、ドリームサトウズライス a.k.a. サトウのごはんをレンジにかけていた。蓋を開けずとも、玄関開けたら二分でごはんだ。やはり人間の欲は計り知れない。

そんなこんなで最終的に私はここで何が言いたかったのかと言うと、夢とか米とかどうでもよくて、ディズニーシーにあるアトラクション、ドリームフライヤー a.k.a. ソアリン。この間初めて乗ったんですけど、本当に最高でした。ありがとうカメリア・ファルコ。あれはマジでオススメです。

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