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人生でいちばん短い帰省

何度訪れたかわからない見慣れたはずの羽田空港。
ほとんど閉まっている搭乗カウンターに伸びるいくつかの列以外、
見慣れない静寂を滲ませている。

ドイツへの引っ越しを一月後に控えた初夏、
コロナの影響で連れていくことが困難になってしまった愛犬愛猫を、
宮崎の実家へ預けるためのフライト。

約二時間の空の旅。

宮崎空港へ来てくれていた両親へ我が子を預け、
たった一杯のお茶を飲むことすらせずすぐに別れた。
両親もそれなりに高齢、実家にはもっと高齢の祖母もいる。
東京から来た私との接触はなるべく避けたい。

引き返すフライトまで約4時間半。
駐車場でぼんやりと空を眺めていた。
太陽が高く高く上っている。

袖摺れの人とさえ会うこともままならない。
人間の事情で預けることになってしまった我が子。
帰省とも呼べぬ数時間の滞在。

こんなことは、一度でいい。

約二時間の、空の旅。
上空から見えた夜の羽田空港は、見慣れたあかりを灯していた。

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