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BOOK CAFE KATOBUN 5 この2か月に読んできた本10冊 レビュー

3月に入りました。
道端の草に木の芽に、近づく春を感じます。

前回の記事では、保健所へ設備基準の確認に行ってきたことを書きました。
BOOK CAFE KATOBUN 4|s.suzuki|note

いま、メインコンテンツの【並べて楽しい絵本の世界】の更新が止まってしまっています。

そのことについて、少し書きたいと思います。

そもそも【並べて楽しい絵本の世界】は、特定の読者を想定せずに、ただひたすらに、好きな絵本、感動した絵本を並べてゆくという手法で書き始めましたので、年齢別子ども向けとか、その親に向けて本をおすすめするといった記事にはなりませんでした。

この後もそれは変わらないとは思うのですが、BOOK CAFE を作ろうというお話をいただいた時に、そのカフェ経営コンセプトを聞いて、少し考えることがありました。

いつまでも学び続けたい大人と、大人のように過ごしたい子どものための居場所=シェアリビング
というのがコンセプトです。

その中に絵本を組み込むとなると、私たちの間ですぐ話題に出てきたのが、「○○文庫」です。1950年代、石井桃子さん設立の「かつら文庫」や、67年松岡享子さん設立の「松の実文庫」などが、記憶の中の奥深くに眠っていたのを思い出し、ふたたびトビラをたたくことになりました。

そんな折に、松岡享子さんが1月25日にお亡くなりになって、たくさんの方が追悼の言葉をネット上でも発信されているのを目にしました。
児童書専門の私設図書館 公益財団法人東京子ども図書館の理事をされていたかたですが、ほとんどの人の記憶は、松岡さんといえば「パディントン」「うさこちゃん」などの数多くの素晴らしい翻訳絵本の記憶だと思います。

我が家では他のご家庭と同じように、休みの日に図書館にくりだして、自由に子どもに本棚から選んでもらって、毎週かかえきれないほどの絵本を持ち帰り、読んできました。そんな至福の数年間の間に、50年も60年も読み継がれている絵本たちに出会い、その秘密や不思議にとても興味を覚えました。そんな私にとって「文庫」の活動をしている先生方の著された書物も宝物のようなものでした。

今年、BOOK CAFEのお話をいただいてから、カフェとしてのお店と、そこで実現したい絵本棚に何をならべるのか?という課題。

そんなことを考えながら、この2か月を過ごしてきました。


どうぞ中から門をあけてやってください。
「おはいり」と声をかけてやってください。
子どもたちは、すぐそこまで来ているんですから。

えほんのせかいこどものせかい

『子どもに本を読んであげるとき、その声を通して、物語といっしょに、さまざまのよいものが子どもの心に流れこみます。』

どういう本を選んで、どういう風に読んであげればよいのか。

興味と共感を呼ぶ本はどんなものなのか。

それぞれの本のから、子どもたちはどんなものを受け取ってゆくのか。

60冊の絵本の紹介とともに、文庫での子どもたちの表情や様子などを織り込みながら、あたたかい言葉でつづられています。

疎開体験、中学高校時代、子どもの本との出会い、アメリカ留学、アメリカの図書館での仕事、帰国後の体験などなどをベースに、日本における図書館の歴史、そこで働く司書さんたちのことなど、ちがった視点から伺い見ることができます。『えほんのせかいこどものせかい』と合わせて一気に読みました。ひたすら夜遅くまで本を読み、勉強していた著者の姿を思い浮かべて感動しながら。

分厚い本です。
書店に勤務していて、『おはなし会』を主催していた時に、何か一冊歴史のある本を、と思った時に開いていました。当時は本当に忙しく、通して読むことができませんでしたが、日本の絵本の歴史をもう一度振り返りたくて、今回は読み通しました。とはいえ、そんなに堅苦しく身構えることはありません。子どもに手渡したいものを考えながら、自分と向き合う絶好のお供。

私たちのもとへ、たくさんの絵本を届けてくれた、絵本づくりの先生といえば、この方。声に出して読んであげることが、子どもたちにとってどんなにたいせつか、よい絵本がどんなものなのか、絵の持つチカラ、タイトルのまんま、ことばのよろこびについて、うんうんとうなづきながら一気に読めます。

NPOブックスタート
赤ちゃんに絵本を手渡す活動を続ける「ブックスタート」は「声の言葉」で語りかけることで、気持ちが通いあうような、至福のひとときがうまれることを私たちに教えてくれます。松居直さんの講演や発言の記録を一冊の小さな本にまとめて、届けてくれました。60ページほどの本ですが、言葉の消えるこの時代。人の口からでる声をじかに聴くことの意味を大切にしています。

精神科医である神谷美恵子さんは、この本の中で人の一生が果てしない『こころの旅』であるととらえています。発達心理学などに興味を持ったきっかけとなりました。神谷先生の本は私の読書の原点でもあります。拾い読みのつもりで開きましたが、結局読み通してしまいました。幼い心がどのように育っていくのか、神谷先生はご自身の息子さんを育てながら、細やかな日記をつけていらっしゃいます。とても心に響きました。

絵本が、子どもだけでなく、大人にとっても、とても大切なものなのだと、私は強く思っています。21章にわたって、私たちの人生のさまざまな局面で出会う困難や経験があり、その時にその閉じられたしまったように感じる世界の扉をひらいてくれる絵本があることを語ってくれています。まさに私が思っていたことだ!とひざを叩きながら読みました。


河合先生はずっと児童文学や昔話などのことを書かれてきました。
専門は臨床心理学、心理療法であり、悩みを持つ人の相談にのるのがお仕事です。子どものことの専門家でもありません。なのに、なぜその生涯をかけて、子どもの本のことを熱心に研究発表されてきたのか、たくさんある先生の本の中から、これを選んで襟を正しました。

『かつら文庫』の軌跡
感謝にあふれる気持ちで読みました。
これから自分たちは何ができるだろう。
意思を新たにするために、たびたび開くことになるだろう本

哲学界のロックスターと言われるマルクス・ガブリエルと、絵本の世界になんの関係がある?と疑問に思われることと思いますが、なぜかヒントがあるに違いないと思って開きました。
たとえば、カフェなど飲食店はこの禍の中で、いちばん存続が危ぶまれているお仕事です。そんな中であえてボランティアではなく、困難なことが最初から分かっていることを、選択している私です。
彼の言う倫理というものに耳をかたむけて、これから大切になってくる「つながり」というものを自分なりに考えさせてくれるコンパスのような一冊。

自然はウイルスを通して我々にメッセージを送っている。我々も動物であり、自然の一部であるから、自然は私たちに訴えているのです。立ち止まらなければならないと。私はウイルスは地球の免疫反応だと考えています。人間が複雑な生態系をどんどん破壊するので、生態系が反撃しているのです。

p.42

これから、倫理的、理性的に生きることを哲学の観点から教えてもらいました。絵本のはじまりは子どもに手渡すことかもしれませんが、それを”読んで”あげる時、その声の響きを最初に聞くのは、おとなです。

そんな場面を創造してゆける場所を作りたいな、と思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

気持ちあらたに、【並べて楽しい絵本の世界】を書いていこうと思います。
また、お立ち寄りください。

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