20231024

 小川洋子『琥珀のまたたき』(講談社文庫)を読み終えた。小川作品にしてはめずらしく、かなり読み進めるのに苦労したことは以前にこの日記で言及していたが、構造の問題であると思った。「わたし」という一人称で語られる現代パートと、アンバー氏の過去が語られる「琥珀」としての三人称単元視点の過去パートが章ごとでもなく、パラグラフで入り組んでいる。文体としてはいつもの小川作品らしく平易で、読みやすいのだが、如何せん「わたし」が誰なのか、「琥珀」として壁の内側から出た後、いかにして「アンバー」となったのか、最後まで言及されることはない。この二つの同時進行的物語を結びつけることが非常に困難だった。とは言え、この手法はわたしも実際にやりがちであるので、改めて反省材料として勉強になった。

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