20231027

 小川洋子読書会だった。今回の課題図書は『琥珀のまたたき』(講談社文庫)。山奥の壁に囲われた一軒家で幼い三人姉弟が外の世界を知らずに、独自の世界観の中で暮らす様子と、その思い出を回顧するアンバー氏に想いを寄せる「わたし」目線での二つの空間と時間が同時に展開していく。この構造上、代表作は比較的読みやすいと思っていたが、今作はかなり苦戦した。と同時に、登場人物にも感情移入できずにいた為に物語のカタルシスも感じることができなかった。かなりネガティヴな感想になってしまったが、参加者の一人が物語の主人公である琥珀(のちのアンバー氏)が十代の早い時期に外との交流をシャットダウンされ、彼自身もそれで満足するようになって内にこもってしまった寂寥感を感じた、という感想を述べて、わたし自身、全くそういう深い部分を読み込めていなかったと反省した。家族との関係性も社会と関わることで変化するということを改めて思った。そういう気づきがあるので、読書会はとても有意義で楽しい。

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