20240717

 折坂悠太『呪文』を聴いている。二〇二一の傑作『心理』から実に三年ぶりとなるスタジオアルバム。折坂はコロナ禍でのフジロック出演をキャンセルしたことで一時ファンや当時の業界内でも賛否の別れる渦中の人になった記憶がある。わたしはその前、くるりの主宰する「京都音楽博覧会2019」で彼のライブを遠巻きに観たことがある。フジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』の主題歌「朝顔」を歌うなど、ミュージシャンとして広く知られるようになっていた頃で飄々とした面持ちと独特の高めのトーンと揺らぎのある歌声が京都の梅小路公園の雰囲気と合っていた憶えがある。
 あの頃はどちらかと言うと一人の弾き語り調のスタイルがメインだったが、サム・ゲンデルやイ・ランをフューチャリングした『心理』以降はバンドスタイルでの音作りに変わっていて、今作でも様々な曲調でバンドのアンサンブルが非常に生きた作品だ。それでも、「正気」のような心の奥底に染み入るようなメロディセンスは健在で今作でもしっかりと存在感を示していると言っていいだろう。

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