20230216

 今日も快晴。風はなかったが、空気は相変わらず冷たかった。ギレルモ・デル・トロ監督の映画『パンズ・ラビリンス』を観た。一九九四年のスペイン山中を舞台にフランコ政権下の内戦ゲリラの戦場と古くから伝わる伝説を織り交ぜたダーク・ファンタジー。ギレルモ監督と言えば、アカデミー賞を獲った『シェイプ・オブ・ウォーター』でも顕著だが、一見して気味の悪い造形の人非人と女性の交流を描く奇譚、というイメージがある。今作も典型的にその構造で、将校のもとに嫁ぐ妊婦とその連れ子である主人公の少女が山中で永遠の命を持って生き続ける王女が眠るという伝説の妖怪パンの棲む迷宮で、パンと遭遇し、彼に与えられた使命を果たすことで王女として生まれ変わる物語だ。このパンが薄気味が悪いのはもちろん、彼女の道案内役である妖精もはじめはナナフシのような昆虫で、試練に登場するのは巨大な虫食いカエル、眼球を手のひらにはめ込む人食い巨人など、ことごとく気持ちの悪いキャラクターが登場する。その背景も残虐非道な将校をはじめ、拷問、銃殺と悲惨で救いようのない世界観だ。その中で少女が唯一、光を感じる場所が幻想の世界であり、それはこの映画のラストへと収束する。後味はよろしくないが、とても素晴らしい作品だと思う。

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