20231004

 雨が降ってずいぶんと気温が下がった。銀杏並木道を歩けば、潰れたぎんなんの匂いが漂う。やっと秋という感じか。くるりの新譜『感覚は道標』を聴いた。結成時のオリジナルメンバーであるドラマーの森信行が参加して、初心に戻るというか、岸田繁、佐藤征史と共に懐かしい体制での十四枚目となるスタジオアルバム。九六年の結成から三十年近く経っても音楽を続けているということは本当に凄いことだ。ローリングストーンズには誰も敵わないが、彼らはやはりモンスターなので、日本という地でひたすらギターロックバンドを続けているというのは驚異的だと思う。伊豆のスタジオでの制作の様子はドキュメンタリー映画『くるりのえいが』として公開される。二〇〇二年にリリースした四枚目の『THE WORLD IS MINE』まで参加していた森が脱退してからも、様々なメンバーチェンジを経ながらその度に多様な音楽性を見せてきた。今作では美しいメロディーラインが印象的な「朝顔」、三枚目の『TEAM ROCK』収録の名曲「LV30」へのアンサーソングのような「LV69」やブルージーな「馬鹿な脳」など、三人で心から音楽を楽しんでいるような幸福感に満ちた作品になっている。「やっぱり音楽が好きだ」と叫んでいるようで、こちらも楽しくなってくる。

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