20230816

 世間では夏休みもお盆も終わった。暑さ寒さも彼岸までと言うが、まだまだ暑い。朝夕は随分過ごしやすくなったかもしれない。東海道が台風の影響で新幹線が動いていないようだ。自然災害は往々にして予定を狂わすものだ。人間も大したことがないことを思い知るにはいいのかもしれない。
 読書会に向けて町屋良平「生きる演技」(文藝2023年秋号)を読んでいる。冒頭はかなり読みづらい感じだったが、中盤に差し掛かると不思議なもので文体に慣れてくる。幼いころから芸能活動をしていた二人の男子高校生を中心にその家族、高校で知り合った友達、芸能関係者を通して本音と演技のあわいを行き来してアイデンティティを彷徨う二人が互いを意識しながら文化祭で劇を披露する。先日読み終わった滝口悠生の『水平線』でも終盤に女優が大変重要な役割を果たす。霊魂と実存の関係をこの二人がそれぞれの実作において中心に据えているということに不思議な一致を見た。

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