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夢中になれるものを見つけるとクリエイティビティが高まる


「フロー」が起きる条件


フロー」という言葉をご存知でしょうか?「フロー」は、アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイ博士によって提唱された概念で、時間感覚を失うほど、何かに没入している状態を指します。人はフローの状態になると、称賛や金銭的報酬といった外部からの利益は一切関係なくなり、活動それ自体が楽しく、自分の全ての意識がその活動に向けられるようになります。

スポーツではよく、「ゾーンに入る」という言い方をしますが、これがフローの状態に該当します。ゾーンに入ると、例えば、野球のバッターであれば、ボールが止まっているように感じたり、サッカー選手がPK(ペナルティ・キック)を蹴る場合であれば、相手のキーパーの動きが手に取るように把握できたりします。

芸術の領域でも、フローは起きやすいと言われており、例えば、画家が夢中でキャンパスに向かって絵を描いている時や、作曲家が夢中でピアノに向かって作曲をしている時などが該当します。

もっと身近な例としては、ビジネスパーソンがビジネスのアイデアを夢中で企画書に落とし込んでいる時なども、フローの状態になっていると考えられます。

このフローが起きやすい条件として、次の3つが挙げられています。

1. 活動の難しさのレベルがピッタリであること

2. 目標が明確であること


3. フィードバックが即座に得られること


活動が難し過ぎれば不安になってしまいますが、一方で、簡単過ぎると退屈してしまいます。自分のレベルに合致している課題に取り組むことが、フローに入るための重要な条件となります。(詳しくは、「仕事に没入するために必要なこと」をご覧ください

そして、フローの状態に入る、つまり、何かに夢中になっていると、クリエイティビティが高まることが研究で明らかになっていますので、次に紹介します。


「フロー」がクリエイティビティを高める


イギリスのグラスゴー・カレドニアン大学心理学部のレイモンド・マクドナルド博士らは、スコットランドの音楽専攻の大学生45人を対象に、作曲中にフローの状態に入る度合いが高いほど、創作した作品のクリエイティビティが高まるのか、実験を行いました。

実験では、参加者(大学生)を3人1グループに分けて、各グループはそれぞれ1曲を創作するように指示されました。また、その過程で、メンバーは最低3回、対面で集まって、全員で創作活動を行うように指示されました。

そして、毎回集まる度に、チクセントミハイ博士が開発した「経験サンプリングフォーム」(ESF: experience sampling form)を使用して、各メンバーには、タスクへの集中レベルや、スキルと挑戦のバランスなどについて、質問に回答してもらい、フローの状態を測定しました。

こうして完成した作品(楽曲)は、複数の音楽専門家によって、そのクリエイティビティを厳粛に評価されました。

分析の結果、(個人よりも)グループにおけるフローの状態が高いほど、完成した楽曲に対するクリエイティビティの第三者による評価が高いことがわかりました。

個人よりもグループとしてのフロー状態と、楽曲のクリエイティビティが関連していたというのは、作曲が対面でのグループワークによる努力の賜物であることに鑑みると納得できます。

この研究から、時間を忘れて何かに夢中になり、フローの状態になることで、よりクリエイティブな成果を生み出すことができるという関係性が示唆されました。


自律神経と「フロー」

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