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ストレスとメンタル・マネジメント

身近になったストレスやメンタルの話題

 「ストレス」や「メンタル」という言葉は、今や誰でも普通に使う言葉になったのではないでしょうか。「○○さんの言動がすごくストレスなんだよね」、「最近、メンタルが弱っているんだよね」など、そこかしこの会話で聞こえてきそうです。誰もが身近に感じるようになり、声に出して話題にすることも当たり前になった、このストレスやメンタルというテーマについて、私は、起業家兼研究者という立場から、考えていきたいと思います。

 ところで、自分のストレスやメンタルの状態を把握するとき、私たちは、ほとんど自分の主観を頼りにしていると思います。日常生活で、「ストレスがたまっているなぁ」と言うときは、特に何かで測定する訳でもなく、主観で感じたまま、言葉として発していると思われます。しかし、最近は、様々な手法で、このストレスやメンタルの状態を客観的に数値として見える化することが可能になってきました。アップルウォッチなどのウェアラブルデバイスで心拍数をチェックすることで、ある程度、自分のストレスを推定することができますし、私の会社では、スマートフォンのカメラを使ったストレスチェックのアプリを世にリリースしています。メンタル・マネジメントの第一歩は、まずは自分の状態を知ることですね。

ストレスとは?

 「ストレス」はもともと、物体に力が加わった時に生じる「ひずみ」を指す言葉で、工学・物理学の用語でしたが、アメリカの生理学者、ウォルター・B・キャノン博士(Walter Bradford Cannon、1871~1945)によって初めて医学分野で使用されるようになりました。キャノン博士は、母ネコのそばにいる仔ネコをどこかに連れ去ると、母ネコは不安な表情を見せると同時に、胃腸の運動が止まってしまうこと、そして仔ネコを戻してあげると、再び胃腸が動き始めることを発見しました。この観察から、ストレスが生物の身体に大きな影響を与えているのではないかと考えたわけです。

 そして、もう1人、初期のストレス研究で有名な学者がいます。ハンガリーの生理学者、ハンス・セリエ博士(Hans Selye、1907~1982)です。セリエ博士は、ストレスを「外部環境からの刺激によって起こるゆがみに対する非特異的反応」と考え、ストレスを引き起こす外部環境からの刺激を「ストレッサー」と定義しました。そして、私たちの身体にストレスが持続的に加わると、一連の非特異的な定型反応が起こるという、いわゆる「ストレス学説」を唱えました。

メンタル・マネジメントの必要性

 ビジネスパーソンが抱えるストレスには、様々なものがあります。例えば、上司や同僚との人間関係や、仕事内容や仕事量、そして、収入面に関することなどです。これらのストレス要因(ストレッサー)に対して、私たちが改善できることは何でしょうか?会社員の場合、一緒に仕事をするメンバーや、仕事内容・仕事量、そして収入を自分でコントロールすることはなかなか難しいと思います。そのため、これらのストレッサーが原因で生じるストレスに対しては、セルフマネジメントしていく必要があるのです。もちろん、1人で抱え込みなさいと言っているわけではありません。自分が使える資源(リソース)を最大限に活用しながら、セルフマネジメントしていくことが大切なのです。

 ここでいう資源(リソース)とは、上司や同僚からの支援や、建設的なフィードバック、自己啓発セミナーへの参加、自分の働き方を自分で自由に決めること(フレックスタイムや在宅勤務、時差通勤、休暇取得、副業の実施など)など、多岐にわたります。また、楽観的になることや自分に自信を持つこと自己効力感といいます)など、内面的なことも、メンタル・マネジメントに欠かせない重要な資源(リソース)となります。これらの資源(リソース)をフル活用して、メンタル・マネジメントをしていくことが、ストレスだらけの時代のビジネス環境においては、絶対に必要です。これから、このnoteで、メンタル・マネジメントに役立ちそうなことを、エビデンスに基づきながら、どんどん発信していきます!


参考文献:
Selye, H. (1950). Stress. Montreal: Acta, 1955.他


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