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恋アス4話の天文シーンを元天文部のオタクが考察する

TVアニメ「恋する小惑星(恋アス)」の星空シーンや天文に関わるシーンを検証・解説する記事の第4弾です。まだ観ていない方にはネタバレとなる可能性があります。ご注意ください。

今回はつくばでの合宿回でした。筑波研究学園都市は科学好きなら絶対に楽しめる街なので、この機会にぜひ巡礼しましょう。

はじめに・おことわり

筆者は中学・高校・大学で8年間天文部に在籍し、現在も趣味として天体観望を行っています。一方で、地質・気象など地学の他分野については中学の授業レベルの知識しかなく、言及できません。ご了承ください。

ご紹介するアニメ中の表現が、現実と異なる場合もあり得ます。本記事の目的は考察を楽しんで頂くことで、アニメの間違いをあげつらうことではありませんのでご注意願います。また、本記事の考察内容に間違いを発見された場合は、コメント欄やTwitter(@kn1cht)までお知らせください。

これまでの考察記事は以下からお読みいただけます。

「あっ、ロケット!」「あれは科学館にある実物大の模型だよ~」

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つくばエキスポセンターのプラネドームとH-IIロケット模型(筆者撮影)

つくばエキスポセンター屋外展示の一つ、「H-IIロケット実物大模型」です。つくばエキスポセンターは、1985年に行われたつくば万博(国際科学技術博覧会)の施設を引き継いだ科学館です。H-IIロケット模型は高さが約50 mもあり、つくば駅周辺からもよく見えて目印になります。

天文ファン的ポイントとしては、科学万博で披露された世界初の一球一光源式プラネタリウムである「INFINIUM」1号機が展示されていることでしょうか。今でこそプラネタリウムは「恒星球」という星の光を出す装置が1個のものをよく見ますが、当時は北天用と南天用が分かれた二球式が定番でした。ミノルタ(現・コニカミノルタプラネタリウム)が開発したINFINIUM1号機は万博後も20年活躍し、引退した現在ではプラネドームへ続く通路で展示されています。

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INFINIUM 1号機の恒星球(筆者撮影)

JAXA筑波宇宙センター

筑波宇宙センター(TKSC)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究開発施設です。研究現場なので、一般人が普段から立ち入れる範囲は手前の展示館「スペースドーム」に限られます。

アニメ本編でも言及されている通り、駐車場奥のロケット広場にはTKSCのシンボルであるH-IIロケットの実機展示があります。記念撮影スポットなので、この構図の写真に見覚えのある人は多いと思います。なお、後ろの建物は総合開発推進棟(C-1棟)です。

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筑波宇宙センターのH-IIロケットと総合開発推進棟(筆者撮影)

つくばエキスポセンターと同じロケットの展示ではありますが、やはり実物だけあってディティールや質感は段違いです。恋アスを機に聖地巡礼される方は、ぜひ見比べてみてください。

※ みらたちはこの後「ガイド付き見学ツアー」に参加していますが、筆者は参加したことがないので詳しくは分かりません。JAXAファンの方のフォローお待ちしています。

観望会

宇宙センター訪問後、遠藤先生のじいちゃんの家で望遠鏡を使っての観望会が始まりました。

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部

セリフで満月の日であることが明言されているので、月の配置から考えてこの日は2017年8月8日です。望遠鏡を広げ終わったのは、21時30分ごろと思われます。

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Stellarium 0.19.3より

AP赤道儀

遠藤先生のじいちゃんが持っている望遠鏡の架台は赤道儀でした。この赤道儀の機種は、画面にバッチリ写っている通り「ビクセン APシリーズ赤道儀」です。鏡筒は、地学部のものと同じく「A80Mf」です。

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部

AP赤道儀は、ビクセンの赤道儀の中では安価で手軽に使えるエントリーモデルという位置づけになります。モータとコントローラが付いて自動追尾ができる機種(AP-SMマウント)もありますが、今回登場したものは手動のタイプでした。これにA80Mf鏡筒が付いたAP-A80Mfは、実売価格10万円から12万円ほどのようです。

赤道儀は、赤経軸という回転軸を地球の自転軸に合わせることで、天体を追いかけることができます。この作業を「極軸合わせ」といい、極軸望遠鏡という専用の望遠鏡で(北半球なら)北極星を見ながら正確に合わせます。

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部(軸を示す矢印を追記)

ここでもう一度赤道儀の描写を見てみましょう。上から見た図に直すと、極軸合わせをした上で南東に鏡筒を向けた状態が、正確に描写されているのがよく分かります。

きら星チャレンジ

石垣島で2泊3日の観測を行うこのプログラムは、「美ら星研究体験隊」という名称で実在します。体験学習という形式ではありますが、実際に新天体を発見することもあります。

美ら星研究体験隊は、2005年からほぼ毎年8月に開催され、初回の2005年にいきなりメーザ天体(強い電波を出す天体)を発見しています。遠藤先生が高校時代に参加していたのは、2005年から2010年位までのどこかでしょうか。

まとめ・おわりに

とにかくつくばの背景美術がすごい回だったと思います。筆者はつくばへは数えるほどしか行っていないので、きっとつくばガチ勢(?)の方のほうが色々と語ることがあるでしょう。

既に、恋アスで出た場所を中心に巡礼した記事を書いた方がいらっしゃるので、併せてお読みください。


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