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恋アス5話の天文シーンを元天文部のオタクが考察する

TVアニメ「恋する小惑星(恋アス)」の星空シーンや天文に関わるシーンを検証・解説する記事の第5弾です。まだ観ていない方にはネタバレとなる可能性があります。ご注意ください。

5話本編の天文成分は少なかったものの、オープニング・エンディングの映像が星空含め変わったようです。まずはOPの変更点から見ていきましょう。

はじめに・おことわり

筆者は中学・高校・大学で8年間天文部に在籍し、現在も趣味として天体観望を行っています。一方で、地質・気象など地学の他分野については中学の授業レベルの知識しかなく、言及できません。ご了承ください。

ご紹介するアニメ中の表現が、現実と異なる場合もあり得ます。本記事の目的は考察を楽しんで頂くことで、アニメの間違いをあげつらうことではありませんのでご注意願います。また、本記事の考察内容に間違いを発見された場合は、コメント欄やTwitter(@kn1cht)までお知らせください。

これまでの考察記事は以下からお読みいただけます。

OP2

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部

3話までのオープニング映像では春の星座が登場していましたが、5話で秋の星座に変わりました。星座線が引いてあるのでわかるよという方も多いかもしれませんが、星図ソフトでほぼ同じエリアを表示させたものを掲載しておきます。中心のうお座の下に、変光星ミラがあるくじら座も写っていますね。

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Stellarium 0.19.3より

劇中では夏休みが開けて文化祭準備に突入していますから、季節に合わせて変更されたと考えられます。夏・冬バージョンも今後用意されるのか、気になるところです。

天文アニメの元祖といえる『宙のまにまに』でも同様の演出が用いられ、劇中の季節に合わせてエンディング映像の中の星空と服装などが変化していました。星空は季節により毎年同じように移り変わるため、天文を趣味にしていると季節感に敏感になれてお得(?)です。

「あ、木星!」「へぇ~すごいねー! ぱっと見で分かっちゃうんだ~!」「うん、色と明るさで大体…」

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部

星はそれぞれ色が違います。特に、金星・火星・木星・土星は明るいので、裸眼(望遠鏡などを使わない状態)でも色が分かりやすいです。金星はギラギラと明るい黄色、火星はオレンジから赤色、木星・土星は金星より控えめの黄色といった印象でしょうか。明るさについては、惑星の地球・太陽との位置関係により変わっていくものの、5話のこのシーンのように夕空でも目を引くほど明るく見えます

なお、木星の位置から考えて、この日は2017年8月15日とのことでした。方角は西方向で、木星の高度は20°程度です(電車の窓から見上げるほど高くはない気がしますね……)。

火星・土星が同時に写った写真を持っていたので、色の比較のために載せておきます。かなり色が違うのが分かるかと思います。
この頃は火星が最も明るい「衝」の少し前で、土星よりもかなり明るく見えていました。

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土星・火星とアンタレス(2016年5月・筆者撮影)

セイムチャン隕石

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© Quro・芳文社/星咲高校地学部

海水浴の後、ミネラルショーでみらが隕石を見つけるシーンです。説明板を見ると、「Seymchan/石鉄隕石(パラサイト)/1967年発見/Seymchan. Magadan district. Russia」とあります。

セイムチャン(Сеймчан)隕石は、1967年6月に発見された隕石で、画像の通り鉄-ニッケル合金の中にかんらん石が混ざったパラサイト隕石の一つです。ネット上では日本語の学術的な情報があまり見つかりませんでしたが、ネットオークション等でかなりの数が出回っているようです。パラサイト隕石自体が希少なので、数百グラムでも数十万円の値段が付いています……。

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エンディングの方も、秋の星空にリニューアルされました。オープニングよりも更に南の方が写り、あお・みらの頭上にくじら座が来ていますね。

左のエリダヌス座は、聞き覚えのない人も多いのではないでしょうか。もともとこのエリアには明るい星が少なく、プラネタリウム等でもギリシャ神話で有名な秋の星座たちが優先して取り上げられるので、知名度が低いのです。川がモチーフの星座であり、オリオン座のリゲル付近から始まってダイナミックに蛇行した姿をしています。

(おまけ)「夜空」アナザージャケット

こおれで本編は終わりですが、5話が放送された週にEDテーマ「夜空」のジャケットイラストが公表されたので、言及しておきます。

みらの頭上に見えているのは、オリオン座の三ツ星から下の部分です。1話でも西の空で沈む前の姿が出てきましたが、ここでは真っすぐ立っているので、秋~冬あたりの夜だと考えられます。
範囲内に描かれている星座は以下のような感じです。うさぎ座が目立つ位置にあって、うさぎ座ファンの方には嬉しい構図ではないでしょうか。

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Stellarium 0.19.3より

ところでみら・あお共にパーカー程度のラフな格好で、あおに至っては下が半袖ですが、秋・冬に星を見るならもっと厚着しないと寒さで星どころではなくなると思います。
山の上にいるような描写ですが、山間部に星を見に行く場合、下界よりも1シーズン分寒いと想定して準備する必要があります。具体的には、夏なら春・秋くらいの服装、春・秋なら真冬の服装が丁度いいです。冬ともなると大量に重ね着して全身モコモコの状態でないと耐えきれません。

恋アスを機に星を見に出かけてみようという方は、寒さには十分お気をつけください。登山やキャンプ用の防寒グッズを揃えられると安心できると思います。

おわりに

5話は桜先輩の心情の変化が丁寧に描かれた回でしたが、それよりもイヴちゃん先輩登場のインパクトが強かった気がしますw
恋アスのアニメは原作に比べるとギャグ要素が減ったと言われていますが、イヴちゃん先輩1人で取り返さんばかりの勢いでした。

夏の天文ネタと言えば毎年お盆の時期に極大となるペルセウス座流星群ですが、2017年の夏は月明かりで暗い流星が見えにくい年でした。海水浴の2日前、8月13日が極大でしたが、みら達はペルセ群の流星を見られたのでしょうか……。

本文の正しさの確認及び天体位置推定に関して慶應義塾大学 宇宙科学総合研究会(LYNCS)のmin氏にご協力頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。


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