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大地に爪をたてて

都市の瘡蓋が剥ぎとられ
人びとの〈夢〉がこの世の塵と消えたとき
残されたあなたは大地に爪をたて
世界を一からつくり始める

硬くつめたい土を掘り
わずかないのちを拾い集め
爪は割れ 肌は爛れ
生き延びることただそれだけに

かつて言葉を持たない時代のように
すべてを大地の結び目に頼み
獣にまみれ
その身を預け

懐かしい瘡蓋の園もいまはもう
言葉は遠い記憶を呼び戻す
道具に過ぎず
消え残る〈夢〉は
浅ましき残像に過ぎず

自らのほかに頼るべきものはなく
自らの意志に代わるべきものもなく

あなたはひとり大地に爪をたて
ただ一心に
明日また明日へと
這いずりすすむ

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