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アメリカで成功を収めた日本人起業家からの日本・京都へ向けたメッセージ / スタートアップエコシステムグローバル拠点都市としての未来

第4回公開研究会
日時:2020年7月20日 18:30-20:30
講師:久能 祐子氏(株式会社フェニクシー共同創業者・取締役)
ゲストパネラー:
 橋寺 由紀子 氏(株式会社フェニクシー 代表取締役)
 松浦 太郎 氏(一般社団法人 京都知恵産業創造の森 産学公連携推進部長)
於:ZOOM、YouTube Live

 第4回公開研究会では、連続起業家でもあり、京都でベンチャー支援事業を展開する、株式会社フェニクシー共同創業者の久能祐子氏による講演と、同社社長の橋寺由紀子氏、京都知恵産業創造の森の松浦太郎氏を交えたパネルディスカッションを行った。

久能氏講演

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ベンチャー起業家として
 当初は、京都大学で基礎研究に携わりアカデミック・サイエンティストを目指していたが、ミュンヘン工科大学での留学を通じて自らのミッションに向き合うことになった。1986にプロンストンテクノロジーと出合い、より早く効果的に臨床現場に届けるため、サイエンティストから起業家に転身した。企業内起業による㈱アールテックウエノ(1984-)の立ち上げ、アメリカでのスキャンポファーマシューティカルズ(1996-)の設立と上場、VLPセラピューティクスの設立を通じて、革新的発明に基づく治療薬がない疾患の新薬の開発と事業かに携わってきた。

山が見えている時に、どう登るか
 ゴールまで行ったときに見える風景を想像するのがビジョンであると考えている。発明、発見をしたときに山が見えると成功する確率が高い。そして、山に登って初めて見える世界(次の山) がある。
 久能氏が次世代の起業家のサポートを企図して設立したのが、ワシントンのハルシオン・インキュベーターである。全米から年に2回、200人の起業家の応募があり、その中から8人を選出・育成する。ひとりで考える安全な場所と非日常的空間、時間と空間の共有、自己効力感の喚起、セレンディピティの促進が重要でありその発想はフェニクシーにも活かされている。

Invention ⇔ Innovation
・自分が新しい発見や発明をした時はインベンションである
・社会が受け入れた時にはじめてイノベーションとなる

 イノベーションには0→1のインベンション(発明・発見)だけでなく、1→10をつくるチームの力、10→100を作る組織の力、100→1000を作る社会の力が必要であり、それらを社会の未解決問題とつなぐのがエコシステムの役割である。一方でインベンションは一人なら跳べる、チームでは難しいという面もある。

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リスクテイカーとは?
 起業家していくなかで有用なのがリスク・リターンの法則である。リスクが高く、リターンを得られる可能性が低いハイリスクーハイリターンと、リスクが低く、リターンを得られる可能性が高いローリスク-ローリターンをクロス(混同)させないことが重要である。

起業家が生まれるエコシステム
〇リスクテイカー型エコシステム
・一人でも跳べる環境
・後ろから推してもらえる環境
 ➡インベンションが生まれる場所

〇リスクシェアリング型エコシステム
・皆でやってみる環境
・参加者が自分で決断している環境
・ファクションとしてのリーダー、リード役が交代できる体制
・バックアップ体制がある
・リスク・リターンの法則がある
 ➡イノベーションが育つ社会

 京都にあてはめて考えると、京都大学はリスクテイカー型エコシステムといえる。自分で考え、決断し、実行し、結果を受けとめる自由があった。そこでは教えられるより考える力、悟る力が重要だった。一方、京都の街はリスクシェアリング型エコシステムではないか。失敗を許容する文化や、敵か味方かを決めない、勝つか負けるかを基準にしない、不必要な競争はしない、幸運を掴む機会(Right Thing, Right Time, Right Place)、といった特徴が相まって、イノベーションが育ちやすい条件が整っている。
 講演は、「個々の想像力を解放して、よりよい世界を作るためにポテンシャルをUnleashし、ビッグビジョン、スモールステップで進んでいきましょう」というメッセージで締めくくられた。


橋寺氏講演

 2017年に米国ワシントンでハルシオン・インキュベーターを見学し、日本でも展開したいと考えた。日本には起業家がおらず、エコシステムがないという指摘をうけて、日本の社会や事業風土に合わせた形でフェニクシーを創業することにした。

 フェニクシーでは社会課題を解決する起業家を支援している。収益と社会的インパクトを同時に追求することで、インパクト投資やESG投資につながり、持続的な好循環を生み出そうとしている。また、日本の企業や組織に埋もれている人材や企業アイディアを発掘し、ユニコーンの育成を目指している。

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 拠点として居住・ワークスペースを兼ね備えた「toberu」を運営し、ソーシャル・イノベーションを育み、共創・競争が生まれる場づくりをしている。ハルシオン・インキュベーターとも連携し、米国の最新の知見を取り入れている。プログラムは4つのステージからなり、①導入と事業アイディアの選抜、②共同生活を行うインキュベーション期間、③それぞれの会社での実行ステージ、④起業をサポートするエグジット・ステージ、となっている。

 エコシステムとは、スタートアップを通貫でサポートする場・サポート・仕組み・資金の組み合わせである。また、仮説検証を繰り返し、最適解を見つけていくのがイノベーションのプロセスにおけるスタートアップ・起業家の役割である。

 日本のトップタレントの多くは組織に属している。彼らが組織に在籍したままスタートアップ起業できるようにするのがフェニクシーのモデルである。企業や地域、アカデミア、海外インキュベーターと連携して社会的インパクトを生み出す事業を創出し、個人・企業・社会のWin-Win-Win(トリプルウィン)、プラスサムの実現を目指している。


松浦氏講演

 京都は令和2年7月にスタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市に選定された。スタートアップ・エコシステム拠点都市では、スタートアップの創出とユニコーンの創出(5社以上)、海外起業家の誘致をめざしていて、各都市でコンソーシアムが設立されている。


 京阪神はヘルスケア・ものづくり・情報通信分野における起業家育成のエコシステム構築を目指す。地方自治体では、購買制度やテーマ募集型課題解決プロジェクト、次世代産業×大学発ベンチャーによる社会課題解決のための技術開発プロジェクトなどの施策を実施する。海外の起業家向けにはスタートアップビザ制度を創設する。

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 京都市内には多くのスタートアップ支援主体やスペースが点在しており、地図情報としても発信している。大阪、神戸との連携に関しては、それぞれの都市が有する実証実験の場を活用し、スタートアップの性質に適した場づくりと、特色を活かした国内外への情報発信を行っていく。
 

質疑やパネルディスカッションを通じて導き出された、エコシステムに関連する仮説


論点1:いま求められるエコシステムとは何か?
論点2:何故京都なのか?京都に何が求められているのか?
論点3:「100年続くベンチャーが生まれ育つ」十分条件とは?

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Q. なぜ京都なのか?
橋寺:京都に立地する上では、Human Capital(優秀な若い人材、Quality of Life(良質な生活空間、都市ブランド)、Support System(産学公の連携・行政のサポート)が揃った街であることが大きかった。そこにFunding(資金調達)の仕組みをつくることを目指している。
松浦:人々が顔を合わせるコンパクトな街であるということ、人材(学生・研究者)が豊富であることが、決めてとなっている。京都の文化やマインドフルネスといったスピリチュアルな部分も、人材獲得にとって有利にはたらいている。

Q. ユニコーンの創出が必要なのか?
松浦:ユニコーン5社を目指しているが、ユニークな成長性可能性がある企業が育っていくことが重要だと考えている。
今庄:いかにシリコンバレー目指すかとう議論があったが、ことごとく失敗している。一方で京都らしさは作らなくても既にあるという面もある。京都の難しさとしては、みんなで一つの目標を立てると、それが正しくても反発が生まれやすいという面がある。


Q. 京都では不必要な競争がないという特徴が指摘されている。過去には京セラやオムロン、ローム等が生まれているが、暗黙的な調整の仕組みがある(あった)のではないか。
橋寺:京都には伝統産業において既にエコシステムがあったと考えて居る。また、企業を目利きする力が、京都の人にはあったのではないか。
松浦:京都企業は地元に有力な顧客がいないため、必然的に海外市場を視野にいれていたのでは。昨今のベンチャーでも、最初から海外市場を意識している企業が多い。
今庄:いまのように体系だったエコシステムでなかったが、既に様々な仕組みがあった。昨今の企業支援はサポートしすぎではないかという意見もあり、あと一歩の後押しをしてくれる仕組みがいるのではないか

Q. 前回の細尾さんの回でも話題になった、京都における経糸とは何か?
橋寺:1→10の人を育てることが重要と考えている。自分も含め、企業のプロセスにおける経験や想いの共有が必要である。
松浦:後継者が育成できるエコシステムを作りたいと思っている。旧来からつづく、旦那衆やエンジェルの存在も大きい。
今庄:京都は環境的に恵まれ、サポートの仕組みは継承されているので、それらを現代的に更新していくことが必要である。

Ⓒ京都ものづくりバレー構想の研究と推進(JOHNAN)講座, Shutaro Namiki(Licensed under CC BY NC 4.0)

  

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