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何も起こらなかった

何かが起こることを想定して行ったのに、何も起こらなかった。そんなことはこれまでに色々ある。例えば『迷子のボランティアをしに行ったのに迷子が1人も来なかった』とか。

今日はそんな日だった。大道芸の迷子ボランティアをしたのだ。担当の方からは迷子が来たらどう対応すれば良いか、親御さんへの引き渡し方、変な人が絡んできた時の断り方などを事前に教わっていた。

頭の中で復習しながら現地へ向かった。集合時間より15分ほど早く着いたので、周辺のお店を見て回った。「終わったらこのお店へ行こう」と考えたりしていた。

時間になったので集合場所へ行き、担当の方から改めて説明を受ける。ボランティアのチョッキを羽織って、バッジをつけて、首から名札も下げて、プレゼントでもらったクラウンの赤い鼻もつけて(すぐ取れてしまったけど)いざブースへ出発。

🌞🎪🤹🏻‍♂️🎭🎨🎹🎶

風が冷たいけれどよく晴れた秋らしい空だった。太陽も出ていて、まさに大道芸日和。

11:00に大道芸が始まると、自転車とピアノを合体させた乗り物に乗ったお姉さんと小さなラッパを持ったお姉さんが目の前を通り過ぎていった。某夢の国を思わせるような愉快な音楽だった。

さて、あとは迷子か保護者を待つのみ。と思っていたら来ない。迷子も保護者も誰一人として来ない。

担当の方が言っていた。「昔の子は親から離れてダーッと駆けて行ってしまっていたけれど、今の子は親にくっついている子が多い」と。迷子事情も変化しているのだな。

「これって今日迷子1人もいないってことあります?」と友達が聞くと、担当の方は「ここのエリアはその可能性が0とも限らない」と答えた。

MA JI KA YO 👁👄👁

もしそうだとしたら何のために私たちはここにいるんだ。迷子が来るまで私たちは何をしていれば良いんだ。迷子を保護するのが私たちの任務じゃないんか。

だが待てど暮らせど迷子は来ない。暇を持て余した私たちは、折り紙で色々と作ることにした。友達が可愛くペンギンやらパンダやらを作る中、私は耳が1/3しかないブタやパックンチョ、金と銀の鶴などを30分かけて作った。(人生で初めて鶴を折った)

何故か耳が足りなかった

なぜ友達はこんなに綺麗に作れるのだろう。この動画の人と私は何が違うのだろう。見ながら作っているのに。できる限り丁寧に折っているのに。そんな気持ちにもなったが、暇はかなり潰せた。

作ったパックンチョは手指消毒をしに来た小さな男の子に引き取られていった。おそらく4歳くらいだったと思う。私が動かすパックンチョをじーっと見つめている。指を差し出して来たのでパクッとしてやると、ふにゃふにゃと笑い始めた。

「持ってく?」と聞くと少し恥ずかしそうな顔で「うん」と言い、母親に「ねえこれ持ってっていいってー」と嬉しそうに報告していた。平和な光景である。

男の子たちと別れると、おそらくけっこうお酒を飲んでいるであろうおじい様2人がやってきた。(缶ビール2本は『けっこう』に相当するのだろうか)

「あんたら昭和生まれか?」と聞かれたので「いえ平成生まれです」と淡白に答えておいた。そこから先も何回かやり取りはしたが、何を話したのかは全く覚えていない。

そうこうしているうちにお昼ご飯の時間になった。用意されたお弁当は幕の内弁当だった。プルプルこんにゃくとプリプリかまぼこが特に美味しかった。

お弁当を食べ終わるとまたブースに戻り、今度はぴょんぴょんカエルを作ることにした。

ぴょんぴょんカエルを作るのがこんなに大変だなんて思っていなかった。上半身を作るところまでは成功していたのだが、脚を作るのが上手くいかない。どうにもこうにも脚にならないのだ。

きっと1時間くらいは格闘していただろう。ぴょんぴょんカエル1つ作るのに1時間かかる人を私は見たことがない。見かねた友達が手伝ってくれた。

顔は描かない方が良かったかもしれない

サッサと手際良く折っていく友達の手をただ見つめていた。思わず「すごーい!」と言ってしまった。学生時代に折り紙を仕込まれたらしい。その子の通っていた学校はどんな学校だったのか、ほんの一瞬だけ気になった。

終了時間までブースにいたが、迷子は来なかった。保護者も来なかった。来たのは4歳くらいのシャイボーイ、お酒に酔ったおじい様2人、靴か何かをプピプピ言わせている超陽気なクラウンのみだった。

実質的な仕事は1つもなかったが、迷子がいないということはそれだけ治安が良いということだ。看護師の世界のように「今日は平和だね」と言った途端に忙しくなったりするのかしらとも思ったが、そんなことも起こらなかった。そこには平和な時間が流れていた。

🐶👮🏻‍♂️🐱

実は今日のボランティアをするまで、私は大道芸というものをしっかり見たことがなかった。見に行きたいと思っても予定が入ってしまっていたり、素通りしてしまったり。そんなことばかりだった。

今回のボランティアは子どもたちと触れ合いたいという気持ちが半分、ボランティアをしながら大道芸も見れるのではないかという気持ちが半分で応募した。

私はお客さんではないので間近で大道芸を見ることはできなかったが、それでもとても楽しかった。

ブースの席からパレードを見ることができた。少し遠くの方で、脚長さんたち(2mくらいあったと思われる)が縄跳びをしているのが見えた。どこからか某夢の国の映画の音楽を演奏している聴こえてきた。シャボン玉が1つだけ飛んできた。

彼らに対して「プロだ」と思う瞬間がいくつかあった。例えば、突然ブースの中に入ってきたクラウン。

彼は確か、少しの愚痴をこぼしていた気がする。内容は忘れてしまったが、クラウンも裏では普通の人間なんだなと感じた瞬間だった。

しかしお客さんの前では、そんな姿を全く見せない。常に笑顔で、どた靴を履きながら滑稽な動きで人々に近づいていく。そうして大人を笑顔にしたり、子どもや赤ちゃんに泣かれたりする。

仮に私がクラウンだとしたら、お客さんの前で疲れた顔を一瞬でも見せないようにすることはできるのだろうか。クラウンとして、いかなる時もお客さんを楽しませることはできるのだろうか。そんなふうに考えた。

【追記】
idio2のお2人、見に行きたかったな…。この間チャラン・ポ・ランタンとブタ音楽祭でコラボしてたんだよな…。