生きていくのが困難なほどの(サロメ出演者紹介⑥古川ゆかり)
2/25まで、獣の仕業という劇団で「サロメ」というオスカー・ワイルド原作 森鴎外翻訳の演劇を上演していました。劇場公演は終了しまして今は配信アーカイブの販売とDVDの予約を受け付けているところです。
トークイベントも開催が決定しました。獣の仕業「サロメ」の収録映像を肴に製作秘話やここだけの話など盛りだくさんに詰め込む予定です。会場兎亭ではドリンク片手に参加いただけます。ほぼ全編見ることができるライブ配信は無料です。
映像もイベントもひとりでも多くの人に見ていただきたく、出演する俳優たちの紹介をします。五十音順で行きます。
第五回手塚優希はこちら▼
古川ゆかりとの出会いは2021年。salty rock「水棲のアリア s.v.」。彼女はsalty rock初客演で、私が初のゲスト演出。段取りや台詞の記憶定着が素晴らしく、タイトな段取りは彼女が下支えしてくれていました。稽古場で物をなくし続ける惨めな年上と（私のことです）それを「またですか」「どうしてですか」と言いながら優しく助けてくれるしっかり者。その関係は恥ずかしながら今も変わっていません。どうして稽古場ってあんなに物が消えるのでしょう。
しかし彼女と出会ってから3年が経った今、彼女には当初とは少し違った印象も抱いています。それは感受性にまつわることです。彼女の俳優としての魅力が語られるときほぼ必ずと言っていいほどこの言葉が使われます。
脚本に登場する人物たちに自分のことのように共感し葛藤する様。稽古場でのどんな小さな課題も他人事にせず一緒に悩み取り組んでいく様。共演者の芝居を見て心からの涙を流す様。偶然一緒になった観劇後の面会時間で、マスクが水没するほど号泣している彼女を見かけたこともありました。
自分の身の回りに起こる物事すべてに心を揺らしている感受性の高さを見ていると、率直に「よく今まで生きてこられたものだ」と感嘆するのです。
消耗せずに生きていくためにはある種の鈍感さは必要で、それは自分の身を守る鎧のような役割も果たします。しかし彼女はノーガード。魑魅魍魎の蠢く現代社会を丸腰どころか全裸で駆け抜ける人間が古川ゆかりその人なのです。
お前そんなんじゃいつか命を落とすぞ、と思うのですが彼女はなんのその。イチイチ傷付き、ものすごい勢いで傷を治療し、また駆けていきます。彼女をそうさせるものはなんだろう？
それは感受性というよりは「愛情」なのかなと今は結論しています。
彼女の俳優としての魅力について生きていくのが困難なほどの「感受性」と最初は書こうと思っていました。
しかし、いや。ここには敢えて「愛情」という言葉を入れたいです。自分が傷つきながら走り回り、周りの者たちを助け、自分のことは後回し。そんな彼女を見ていると、まるでここが戦場ではないかのように見えてくるからです。
彼女の演じる役は「ナアマン」。首切役です。初めてサロメの原作を読んだ時、ナアマンの台詞がひとつもないことに驚きました。こんなにいい役なのに、ひとつも喋らないなんて……。
その後、サロメを上演するにあたって、同じくサロメを原典とする先行小説「ヘロディア」(フローベール作)を読みました。そこにもナアマンと同じ首切役人であるマナエイが登場します。ヨカナーンの首を斬るまでのマナエイの心情が良く書かれており、獣の仕業「サロメ」にも引用しています。その他にはワイルドのサロメに登場する小姓の台詞や振る舞いも引用していて、それから私がオリジナルで書いたセリフが数行ほど。
感受し、傷付き、愛情深く言葉を尽くすナアマン。特にサロメ原作を知っている方たちに味わっていただきたい登場人物になりました。ぜひ。
劇場上演は終了いたしましたが配信アーカイブの販売とDVDの予約注文を受け付け中です。
河原ノ者達が禊ぐ、贖罪と代受苦のサロメ。ぜひ配信で、あるいはDVDで、見届けてください。
獣の仕業 第十五回公演「サロメ」
[■■■, ■■■, Lema Sabachthani?]
配信アーカイブ購入
販売期限：～3/24(日)23:59
配信期限：～3/25(月)23:59
応援キャスト指定でのご予約をご希望の方は「備考」欄へのご記入をお願いいたします
DVD予約注文(初回特典予約～3/31)
≪DVD特典≫
獣の仕業による全編副音声コメンタリー
上演台本PDF
初回特典限定ブロマイド付属(～3/31 23:59)
作=オスカー・ワイルド
翻訳=森鴎外
脚色・演出=立夏
出演=
サロメ(ユダヤの王女 ヘロディアの娘)…雑賀玲衣
ヘロデ(ユダヤの王、サロメの義父)…手塚優希
ヘロデの穢れ ファサエリス(ヘロデの先妻)…小林龍二
ヘロディア(ヘロデの後妻、サロメの母)…柳橋龍(兎団)
ヘロディアの穢れ フィリポ(ヘロディアの先夫、ヘロデの兄、サロメの実父)…佐藤天衣(兎団)
ナアマン(首斬役)…古川ゆかり
ヨカナーン(預言者、イエスの洗礼者)…きえる
スタッフ=
舞台監督：小林龍二
照明：寺田香織
音響：新直人（salty rock/零'sRecord）
撮影・配信：U-3
衣装：きえる
写真撮影：加藤春日
宣伝美術：立夏
制作：手塚優希
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