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「窓の満月」に気付かされた、社会人だからこそできるアカペラへの取り組み方

先月まで所属していたハモニポン」というアカペラ団体で、僕が最後に担当したインタビュー記事が公開されました。

実はこちらの「窓の満月」というバンドのメンバーのうち3人は、所属サークルこそ違いましたが学生時代からのアカペラ仲間でした。

僕を含め皆就職とともに上京し、それぞれアカペラを続けていたのですが、まさか今になってこのような形で共演するとは予想もせず。インタビューをしながら感慨深い思いに浸っていました。

そんなインタビューの中で気づいたことがあったので、編集後記として書いてみます。

彼らと出会った当時から変わらないこと

僕がアカペラを始めたのは2012年、大学1年生の頃からなのですが、当時から変わらないことの1つとして、「アカペラーのメインストリームは学生である」ということが挙げられます。

もちろん、当時に比べると社会人サークルの数や社会人もエントリーできるライブイベントは増えたと思います。しかし、毎年開催されるアカペラの全国大会では、エントリーバンドのほとんどが学生です。

インタビュー記事の中でも触れられていますが、社会人のアカペラーが増えない(あるいは、増えていたとしても、精力的に活動するのが難しい)原因の最たるものは「仕事/家庭のことがあるからアカペラに割く時間がなかなかとれない」ということだと思います。

「窓の満月」の活動スタンスから学べること

だからこそ、「窓の満月」のみなさんは以下のような工夫で、限られた時間の中でも活動の質を高めていき、今回見事『SHIBUYA A CAPPELLA STREET』の最優秀バンド賞を受賞されました。

①バンドクリニックでの講師からのアドバイスや、ライブのお客さんからの感想をもとに自分たちの演奏を改善し続ける
②練習後にできたこと・できなかったことを記録してバンド内で共有し、1回1回の練習を着実に積み重ねていく
③メンバーの達成したいことを言語化し整理することで、目標のすり合わせと優先順位づけを行い、バンドが同じ方向を向いて活動できる状態を作る

またインタビューの中では、「飛び抜けた能力やカリスマ性のあるメンバーがいないからこそ、各々の強みを持ち寄った」という話もありました。

彼らのそういった活動のスタンスには、今なお学生が主流となっているアカペラ界隈において社会人バンドが生き残っていくヒントがある、と僕は思っています。(別に大会を目指したり多くの人に認知されたりすることが全てではないのですが、あえて「生き残る」という表現を使います)

一般的に、社会人にあって学生にないものは二つあります。

一つは「お金」もう一つは「実務経験」です。

「お金」によって得られるアドバンテージ

アカペラというと、「楽器が必要ないし練習も公園とかでできるからお金のあるなしはそこまで問題にならないんじゃない?」というイメージが強いかもしれません。

しかし、お金があることの最大のメリットは「足りない時間を補うための投資ができる(時間を買える)」ということです。

お金があれば、ソーシャルゲームの「課金アイテム」と同じ発想で、限られた時間の中でも最大限個人/バンドとして上達するために「課金」することができます。

「窓の満月」のみなさんが実施していた「アカペラ講師にバンドクリニックを依頼する」方法以外にも、以下のような「課金アイテム」があると思います。
※こういう言い方をすると「窓の満月」のみなさんがなんだか嫌な大人みたいに思われそうなのですが、彼らは本当に誠実な方々ですので、「課金」という言葉に対するネガティブイメージは今だけ忘れてもらえると嬉しいです(笑)

・ボイトレ

・アカペラアレンジの外注

・音楽理論や発声に関する専門書

・プロのアカペラグループのライブチケット

もちろん、これらに課金したからといって確実に上達できるとは限りませんが、「課金アイテム」なんてそんなもので、結局はそこからいかに多くを吸収して自分のものにできるか、という点に尽きます。

だからこそ、「窓の満月」のみなさんがおっしゃるように、「自分たちの課題をもとに、目的意識を持ってバンドクリニックを受ける」といったことが大事になってくるのだと思います。

いかに「仕事」と「アカペラ」を掛け算するか

大抵の社会人は、1週間に40〜50時間程度を「仕事」に費やしています(もちろん、もっと長い時間を費やしている人もいます)。その仕事の中で培った経験とアカペラとを掛け算し、バンドでの活動に還元することで、学生の頃にはできなかったアプローチでアカペラに取り組むことができると僕は考えています。

冒頭に紹介したインタビューの中では、「バンドでの目標設定」において「目標達成の難しさ」「目標達成にかかる時間」の2軸・4象限で目標を整理している、という話がありましたが、このような考え方はメンバーのブラザーさんが実際に仕事で使っている目標設定の考え方だそうです。

(↑ブラザーさん、勝手に使ってしまいすみません笑)

あくまで一例ですが、他にも以下のような形で、「仕事」とアカペラを掛け算することができるのではないでしょうか。

◆マーケティング職であれば…
→バンドでライブに出演する際、SNSで宣伝する文面を考える

◆営業職であれば…
→主催ライブを開催する際、協賛をしてくれる企業を募り、資金に充てる

◆チームのマネジメントをする管理職であれば…
→バンドメンバー一人ひとりにアカペラを通じて何をやりたいかを聞いて、バンドの活動指針を作る

※ちなみに、僕が「アカペラメディアのディレクターをやろう」と考えたのも、仕事の中でWebメディアの記事制作ディレクションの経験があったからですし、インタビュー記事を書くことができたのも、実務としてクライアントへのインタビューを行った経験があったからでした。

もちろん、全ての仕事がそのままアカペラに繋がるとは限りませんが、「今やっているこの仕事、どうにかしてアカペラに活かせないかな」と考えながら取り組んだ方が、仕事は楽しくなると思います(アカペラに限らず、あらゆる趣味において言えることですが)。

「時間がない」のは工夫が生まれるチャンス

僕の好きな考え方の一つに、「時間がないからこそ工夫が生まれる」というものがあります。

もし、社会人になっても学生時代と同じくらい自由な時間があったら、大学卒業後もアカペラを続ける人はもっと増えるでしょう。

しかし、時間がないからこそ、「お金」や「実務経験」を活用して自分たちのアカペラ活動をよりよいものにしよう、と工夫する発想が生まれるのではないでしょうか。

以上、「窓の満月」のインタビュー記事に寄せた編集後記でした。みなさんにとって何かのきっかけになりましたら幸いです。

…と、ひたすら小難しいことを書き連ねてみましたが、一番言いたいことは「最後に担当した記事がかつての同志たちのインタビューっていう展開、シンプルにエモくね?」です。お疲れ、自分。


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