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空音は空へ、幾重にも。

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これまでに書いた短編集。
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記事一覧

ココロ ―短編小説―

本作は有料です。
有料マガジンも作っているのでよろしくお願い致します。

 

 わたしはA山の中に住んでる。

 山のふもとの小学校までは歩いて40分くらいかかるけど、でもわたしは平気だった。だって、この山にはたくさんの生き物がいるから。

 特に好きなのがリスさん。リスさんは毎日せっせとドングリを集めてて、それをお家に持って帰るの。たまにね、ほっぺがプックリふくらんでてかわいいの。

 そんな

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新訳・ドラえもん 出来杉くんのジレンマ ―短編小説―

数年前に、トヨタのCMを見て書いた二次創作。
(CMを見てから読めばさらに面白く感じるかも)
ただ、「二次創作はいけない」という強い反発があったら削除します。

 

 

 僕こと出木杉英才(ヒデトシ)の話をしよう。

 こんなことを自分で言うのも失笑ものだが、僕は容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀の天才にして鬼才であった。自分は優秀だということを生まれながらにして認識できていた僕は、数々のコンク

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恋色の赤~Red Love~ ―短編小説―

 

 運命の赤い糸って、信じる?

 たとえば彼と彼女は前世の縁があって今こうして結ばれているだとか、奇跡が起こったために結婚を決意しただとか、そういう「運命」ってものが、いたるところに転がっているって、思う?

 私は運命の赤い糸なんて信じない。

 ……いや、違うな。信じたくない、だ。

 でも私の目の前には運命の赤い糸がすぅっと伸びていた。

 私の左手の小指から、どこか遠くへと続く赤い糸

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孤高の少女 ―短編小説―

投げ銭作品です。

………………

『孤高の少女』

 中島千尋は言語を持たない。

 いつだって自分の机を眺めている。もちろんその机に何かが書かれているわけでも、不思議生物がそこにいるわけでもない(たぶん)。ひたすら、像になっているのだ。彼女は誰とも言葉を交わらせることもしなければ、表情という感情を表す言語すらも発しない。まさしく、像。物言わぬ、ただそこにあるだけの物体なのだった。

 そんな彼

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ルッピンてゅくてゅく今日も行く ―短編小説―

この小説にはトリックがあります。

気づいた方はすごい。いや、まじですごい。

………………

 ルッピンは足をもがれる。足を綺麗にもがれる。

 足は冷たい檻の中。

 ルッピン少しも痛くない。痛くないけど気持ち悪い。イヤイヤイヤイヤ。ルッピンは叫ぶ。必死に叫ぶ。

 けれどね誰も聞いてはくれない。

 ついにルッピン、足がなくなる。足が一本もないルッピン。でもルッピンは血が出ない。痛くないから

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