ルッピンてゅくてゅく今日も行く ―短編小説―

この小説にはトリックがあります。

気づいた方はすごい。いや、まじですごい。


………………


 ルッピンは足をもがれる。足を綺麗にもがれる。

 足は冷たい檻の中。

 ルッピン少しも痛くない。痛くないけど気持ち悪い。イヤイヤイヤイヤ。ルッピンは叫ぶ。必死に叫ぶ。

 けれどね誰も聞いてはくれない。

 ついにルッピン、足がなくなる。足が一本もないルッピン。でもルッピンは血が出ない。痛くないから血が出ない。血が出ないから痛くない?

 ルッピンは泣いた。えんえん泣いた。でもやっぱり誰も聞いてはくれないの。ルッピンの声は誰にも聞こえない。

 ルッピンルッピン。

 誰かが呼んだ。ルッピン涙目、だけど見た。ルッピンを呼んだのは足たちだった。

 足たちは言う。
 檻の中で言う。

 泣かないで。
 わたしたちは死んじゃうけれど、ルッピンは死なないから。

 そう言った足たちはどこかへ連れていかれた。殺されるのだろう。切られ潰され燃やされて。足たちは殺される。

 ルッピンは、足たちを見送った。

 するとしばらくしてルッピンのもとにドコドコ足が運ばれてきた。足足足足。足足足足足足足足足足足足足足足足。

 これ、ルッピンのじゃない。

 呟くルッピン。
 しかし声は届かない。

 新しくやって来た足たちは優しそうではなかった。いつも怒っているような、だからルッピンは怖かった。

 足たちは言う。
 怒る風に言う。

 やあやあルッピン。これから俺たちがお前の足だ。これから仲良くしようじゃないか。

 今度の足たちは見た目よりも怖くない。怒っているけど怒っていない。

 ルッピンは少しほっとした。

 ルッピンぐぐぐぐ足付けられる。ちくちくぐちぐちがががのが。ルッピンにはまた足ができた。足だ足だ、と喜ぶルッピン。

 今すぐ走り回りたいけどここは空。空は灰色。とても汚く、臭かった。足が届かないから走れない。ルッピンは空が嫌いだった。

 空の中でルッピンは思う。

 早く走りたいな。
 速く走りたいな。

 するとルッピンは空から落ちた。ぐーぐーごごごご、ルッピン落ちた。

 ずしっ。

 新しい足たちは頑張ってルッピンを支えた。ルッピンは頼もしく感じた。

 新しくつけられた足。ルッピンは今すぐにでも走り回りたかった。しかしルッピン走れない。足があるけど走れない。

 ぐちゃぐちゃぐちゅぐちゅ、ルッピンの体に穴が開き、そこから寄生虫がぎゅるぎゅる入る。寄生虫は容赦をしない。

 ルッピンは泣きたくなった。寄生虫が嫌だった。寄生虫はそれでもぬぎゅぬぎゅ入ってくる。

 やーめーてー。

 ルッピンの声は寄生虫にも届かない。

 寄生虫はルッピンの体の中をまさぐりだす。気持ち悪い気持ち悪いー。ルッピンは身をよじろうとする。けれど寄生虫は出ていかない。

 ついに寄生虫は出ていかない。出ていかないからルッピンほっとく。気にしなければ気にならない。

 ルッピンルッピン走り出す。歩けないから走り出す。ルッピンは歩くことができない。何故? ルッピンは走ることができるから。

 ぶらっぱぶらっぱ。ルッピンは走る。走ると陽気になる。楽しい楽しい。ぶらっぱぶらっぱ。

 ルッピン走ってると好きな子とすれ違う。すれ違うけど知らんぷり。目も合わせないで知らんぷり。照れ屋なルッピン知らんぷり。

 好きだけど、好きってことはバレないように……。

 ドキドキルッピン。

 あっちは自分に気づいただろうか。気づいていたら嬉しいな。

 ルッピンどたどた走ってく。今日は楽しい。楽しーな。

 だけれどあれれ、ぽつりぽつりと雨が降る。ぽっぽっぽ。雨、雨、雨。傘がないルッピンはびしゃびしゃ濡れる。

 ルッピン仕方ないから雨払いのける。ぴっぴっぴ。払って払って払って。でもやっぱり雨で濡れちゃう。

 ルッピンは雨が嫌い。体が汚れちゃうもの。多分帰っても体を拭かないからどんどん汚れちゃうもの。

 とてとてどたたた、ルッピン急いで町へ行く。

 ぽっぽっぽ。
 ぴっぴっぴ。

 降る雨払いのけるのを忘れずに。

 雨は止まない、止んでくれない。

 ルッピン新しい足なのに汚れちゃう。汚れちゃうからいやいやいやいや。

 ルッピン急ぐ。

 汚れないように汚れないように。

 とぅるとぅる走ると目的地。

 目的地に着いたけどルッピンよくわかんない。ここってどういうトコなんだろー。ルッピンは足に訊く。

 ねえねえ教えて、ここどこー?

 足たちは言う。
 怒る風に言う。

 ここは、寄生虫たちの寄生虫たちのための寄生虫たちによる寄生虫パーティーなんだぜ。

 えっ、えっ、えっ。

 ルッピンわかんない、りかいふのー。寄生虫ってパーティーするの?

 でもでもよく見れば寄生虫がたくさんいた。ルッピンの友達もいたけど、みんな死んでる?

 うえっ、うえっ、うえっ。

 ルッピン気持ち悪くなった。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 するとルッピンの中から寄生虫たちがずゅるずゅる出てきた。寄生虫たちは満面の笑み。

 でもねラッキー、今のうちに逃げちゃおう!

 ルッピンは逃げようとしたけど寄生虫は許さない。寄生虫が魔法を使うとルッピンは動けなくなった。

 ぽっぽっぽ。
 雨、雨、雨。

 ルッピンは雨に汚される。

 ぽっぽっぽ。
 ぽっぽっぽ?
 ぽわっぽわっぽわっ。

 雨が雪。
 雪が降る。

 寒いよ寒いよ助けてよ。

 ルッピンは足たちに言うけれど、足たちは何も答えてくれなくて。

 あーんあーんあんあんあんあんとルッピンは泣き出した。泣き出したけど涙は出ない。涙は出ないけど泣いている。

 ルッピンはついに寄生虫たちにも助けを求めた。

 お願いお願い誰でもいいから助けてよー。寒いよ汚いよ死んじゃうよー。寄生虫さん、助けてよー。

 するとパーティー、寄生虫たちの寄生虫たちのための寄生虫たちによる寄生虫パーティー、そこからさっきの寄生虫たちが笑顔でカシュカシュやってきた。

 わーわーわー。
 どうしようどうしよう。

 ルッピンは喜べば良いのか怖がれば良いのかわからなかった。りかいふのー。

 だけどね、そうこうしているうちに寄生虫はルッピンの中にぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ入ってくる。

 魔法は解けた。ルッピン動ける。

 うわーいうわーい。

 喜ぶルッピン走り出す。走り出したら止まらない。

 帰ろう帰ろう家まで帰ろう。

 るんるんるん。

 ルッピンは走って帰るのだった。


  〈了〉


………………


ほとんどすべてが比喩表現で書かれた実験小説です。
何についての話なのか、当ててみてください。


………………


※ショートショートのお題、待ってます!10文字程度のお題をください。

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ただし、この小説のちょっとした答えのようなものを書いてます。気になる方のみ、どうぞ。


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