「アウト&アウト」木内一裕著 講談社

ここ最近、警察小説を読みたいという欲求がなくなっている。仕事で考えなくてはいけないことが多く、余裕がないということもあるが、心理的な変化もあるのかなとも思う。ただ、警察小説も難しいのかなと。犯罪規模も、グローバルになり、単純に、チャイナマフィアがということでは目新しさもなく、様々な地域、人種が絡み合う状況であり、描くには複雑過ぎて、状況、背景説明に大部分を取られてしまうことも。国内にしても、一時、半グレがネタとしてよく取り上げられたが、それさえ、より深く潜った結果、小説として昇華させるには、エンタメ要素が描き難くなっている気がする。刑事、窃盗、知能、公安、探偵、外事、水上警察などなど、様々な部門、部署が取り上げられているし、それらも、なかなかに飽和感がある。人間ドラマが主で、警察は手段の一つという作品もあり、新しさはあるが、そうなると肝心の警察パートが薄くなることもある。そういう意味で吉川氏がいま一番の推し。濱氏、鈴峯氏、今野氏、のシリーズも楽しみだが、過渡期でもある。と、そんな中、読んだのが、この作品。警察ではなく、元ヤクザの探偵という設定。登場人物の背景や犯人の犯罪に至る経緯には、引き込まれる部分がある。今回、政治家が悪の大元になるが、その基点は面白いと思いつつ、解決に向けての流れはやや、強引な気もした。その分、犯人が追い込まれた経緯などへの感情移入していた部分が薄まってしまった。とはいえ、好きなタイプの作品であり、続編も購入済み。


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