堂場瞬一著 チェンジ 警視庁犯罪被害者支援課8 (講談社文庫)
どこに向かうのか。
自分が警察小説を読み始めるきっかけとなった鳴沢シリーズの作家、堂場氏。鳴沢シリーズ以外もとにかく読んだ。心理描写というか、事件自体よりも、そこに至るまでの心理、刑事が抱える闇とそこに抗うかのように犯罪に向かう姿など、作品に没頭してしまうことが多い。特に、鳴沢シリーズと高城シリーズ。そこから、時を経て、作者自身も経験を積む。これは企業も同じで、立ち上げ期の勢いから、成熟、停滞と移り変わる。その中でどう変化していくのか。たまには、刺激も必要で専門外にも手を出してみたり、事業間のシナジーとして、融合させた商品、サービスを出してみたり。競合環境も同様。小説で言えば、エンターテイメントという括りで、動画やらがあり、その中での、本であり、小説で、あり、ジャンルとしての警察小説。それこそ、数限りない。その中では、第一線であり、出せば部数が見込める稀有な存在。長くなったが、どこを終着としているのかなと。企業戦略ではないが、この先、どういう風に進もうとしているのかが気になる。もちろん、作品のクオリティは高いし、シリーズ間でのコラボも、ファンとしては嬉しい。でも、読んだ後に残るモヤモヤというか、で、どこに向かうのかなと。小説を書くことは、魂を削ることだなと思う。警察小説で、人の生き死にを描く、無惨に人を殺すこともある。もちろんリアルではないが、それを創作することは、容易ではないと思う。特に、堂場作品の様に登場人物の心理描写に力点があると。相当の体力がいることが分かる。分かるからこそ、長年のファンとしては、経年の作品における変化も受け入れられるというか、それ自体も生きたエンタメとして、自分と同様に、登場人物もベテランになっていくという味として受け入れてきた。プロ野球では、全盛期の選手の豪快さと同様、ベテラン選手のいぶし銀な技も魅力的だというのに似ている。ただ、最近の作品には、技とか円熟よりも、かわす、というか、体幹がない感じがする。と、思いつつ、いざ、自分に置き換えるとどうなのかなと。社会人生活も20年近くになり、当然ながら、20代、30代前半とは、仕事に対する向き合いは変わる。それが、いい意味での変化になっているか、置きに行く動きになってないか。攻める気持ちを失ってないか。と、思ったりする。そこには、仕事感も影響するし、徐々に視えてくる定年に向けてどうゴールしていくかを考えることかなと。なので、冒頭に戻るが、久々に堂場作品を読み、どこに向かうのかという疑問を感じたが、それは同時に自分自身への問いでもあるなと思った。
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