猫に対して感ずるような
寺田寅彦の随筆に「子猫」という随筆がある。
私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだくことのできないのを残念に思う。そういう事が可能になるためには私は人間より一段高い存在になる必要があるかもしれない。それはとてもできそうにないし、かりにそれができたとしたときに私はおそらく超人の孤独と悲哀を感じなければなるまい。
超人の孤独と悲哀とは如何なるものであろうか。
ニーチェの呻吟、執行草舟の涙の哲学がこれに値するのではないかと考えている。
そして、子猫など抱いている場合ではないと襟を正すのだ。
猫抱きて満ちて暮らして緩やかに死してゆくには耐えざりけるや
人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。