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愛着障害

『愛着障害~子ども時代を引きずる人々』岡田尊司

山口周が薦めていたこともあり、本書を手に取った。
「発達障害」という言葉は最近をよく、耳にするようになったが、この障害の背景には、かなりの割合で幼少時の家庭環境における愛着の問題が関係しており、実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースが多いのだと本書では語られていた。
著者は数々の臨床経験の中から、愛着に起因する障害事例を見てきたことが本書、執筆の経緯としていたが、たしかにうなずくばかり。
ルソーやエンデ、ヘミングウェイ、太宰、川端、漱石、中也、山頭火等の文学者たちの事例とその作品を通じて愛着障害の痕跡も記されており、ある種の文芸批評としても読め、大変、興味深かった。
他にも愛着障害を抱えていた、クリントン、オバマ、ジョブズの事例も紹介されていて、障害はその溝を埋めるため、抱える人に莫大なエネルギーを与えることも同時に感じた(もちろん、人生を台無しにしてしまう場合も多分にあるのだが)
巻末には愛着スタイルの診断テストもあり、早速やってみたところ、自分は【安定ー回避型】ということで、比較的安定したタイプとのことであった。
また、あとがきでは、この愛着障害の背景には、効率、生産性を重視してきた合理主義社会にあるのではと警鐘を鳴らしていたことも印象的であった。
愛着をはじめとする、非合理なるもの。
自分の中では、芸術、伝統、野生、霊性。
こういった非合理なるものがこれからの社会に求められることを願ってやまない。

「やがてこの子供達も大人になって世の中に出て行く。そして何かの弾みで悪い人間になるかも知れない。そんな事が無いように俺はこの子供たちの心のよりどころとなって冷たい世間から守ってやるのだ」伊達直人

『タイガーマスク』


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