てぶ~くろ
『てぶ~くろ』ガタロー☆マン 2022年02月刊 誠文堂新社
「悲劇は喜劇に、喜劇は超喜劇に!」をコンセプトに謎の絵本作家、ガタロー☆マンによってに作られる「笑本(えほん)おかしばなし」の最新刊はウクライナの民話「てぶくろ」がテーマでした。
本書、発売日はロシアのウクライナ侵攻が始まるちょうど3日前の2月21日でした。
「優れたクリエイターは時代の預言者たりえる」が持論でもあるのですが、今回のガタロー先生の新作の発売により、その持論はますます強固なものへとなりました。
原作のウクライナ民話「てぶくろ」はある日、森の中におじいさんが落とした手袋の中にネズミ、カエル、ウサギ、キツネ、オオカミ、イノシシ、最後はおおきなクマでやってきて、住みついてしまうというお話なのですが、本作品も物語のアウトラインは踏襲しつつも、ガタロー☆マンならではの独自の解釈もおり込まれ、笑本(えほん)おかしばなしの名にふさわしい内容となっていました。
この「笑本(えほん)おかしばなし」ついにシリーズ累計発行部数20万部を突破したそうで、私のような熱狂的なガタローファンによってだけ、支持されているのではなく、子供たちからも多く支持されているということだったので、大変、嬉しく思いました。
最近、知り合いの小さな子どもたちへのプレゼントは「笑本(えほん)おかしばなし」シリーズ一択なのですが、元気に繰り返し、音読してくれているとも聞き、我が意を得たりです。
黙読もいいのですが、声に出して、言葉のもつリズム、日本語ならではの響きを味わう音読は読む人、聞く人の情緒、感性に働きかけ、成長期の子供たちの発育に欠かせ ないと考えるからです。
この「笑本(えほん)おかしばなし」シリーズですが、その絵もさることながら、文章のリズムも素晴らしく、躍動感がり、声にだして読んでいるとおなかの底から力が湧いてきます。
シリーズ第1作は日本が舞台の「ももたろう」
第2作はロシアが舞台の「おおきなかぶ~」
そして、今回の舞台がウクライナでした。
果たして、次作はどこの国が舞台となるのでしょうか。
また、次の作品が発売されるまでには、現在のロシア・ウクライナの国際的な紛争がおさまっていることを切に願います。
本作『てぶ~くろ』のように、小さなてぶくろの中でも、様々な動物たちが集まり、身を寄せ合って、体を温めあう姿を絵本の中だけで終わらせてしまうのは何とももったないことだと思います。
そのためにも、自分にできることを少しでも行っていかねばと本レビューを記しながら、改めて考えました。
また、現在のロシア・ウクライナ状況ですが、自分が日々のニュースを見る限り、明らかに偏向した情報が多数、報道されており、両国に対して、フェアな視点が欠けていると危惧しております。
西側のメディアを通じて、「悪のプーチン」「侵略するロシア」の図式が多くの人たちに刷り込まれ、複眼的に情勢を把握できているように思えないのです。
これはコロナ感染拡大時の世界的なワクチン接種の流れにおいて、ワクチンのネガティブな側面が深刻に報道されなかったことと全く同様のメディアコントロールの存在を感じます。
このメディアコントロールに関して、本レビューにては多くは語りませんが、現代社会に生きる我々の多くが、ナチスの手法から何ら学んでおらず、一部の情報に踊らされてしまう性質にもっと自覚的にあらねばいけないのではないでしょうか。
参考までに、『プラトーン』『7月4日に生まれて』等が代表作として挙げられる映画監督、オリバー・ストーンにより、2016年に『ウクライナ・オン・ファイヤー』というドキュメンタリー映画が製作されており、ウクライナを巡る矛盾や歴史的経緯、今回の紛争の背景にあるネオコンの暗躍が描かれた作品となっているので、興味のある方、一度、ご覧いただければと思います。
ただ、『ウクライナ・オン・ファイヤー』の作品情報ですが、不思議なことに、現在、ネットから次々と消えていっており、代わって同じく、ウクライナ・ロシア間の問題を取り扱ったドキュメンタリー映画『ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ 自由への闘い』が『ウクライナ・オン・ファイヤー』を検索すると、真っ先に検索上位にあがってくるという不思議な現象が生じておりました。
『ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ自由への闘い』は『ウクライナ・オン・ファイヤー』とタイトルも似ており、内容もロシア・ウクライナ問題を扱っておりますが、作品のスタンスは反ロシアであり、西側のグローバリズムに寄った作品となっております。
現在のウクライナ状況の世界的な報道の在り方の対極ともいえる『ウクライナ・オン・ファイヤー』の視点は今後、ますます重要さを増していくかと考えます。
ウクライナ問題に心を痛めている多くの人たちに『てぶ~くろ』と合わせ、ご覧いただければ何よりです。
「完全であること自体が不完全なのだ」ウラディミール・ホロヴィッツ(ウクライナ出身のピアニスト)
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